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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/四/3 

3 矯正教育

 少年刑務所の矯正教育は,青少年の特異性にかんがみ,一般の刑務所よりも,とくに活発に行なわれている。教科教育と生活指導および職業訓練がそのおもなものであるが,最近は,とくに職業訓練に重点がおかれている。

(一) 教科教育

 教科教育は,義務教育未修了者など学力程度の低い者に,社会生活上必要な算数,国語,社会などの教科をさずけることに力を入れている。とくに,松本少年刑務所では,昭和三〇年四月に松本市立旭町中学校の分校を設立して,全国の少年受刑者のうち中学二年の課程は終えたが三年が未修である者を集め,一年間の授業をしており,修了者には旭町中学校長の修了証書が交付されている。現在まで四回,一〇六人の卒業生をだした。

(二) 生活指導

 生活指導としては,日常生活に必要なしつけ訓練をするほか,一般情操と宗教的情操との涵養につとめ,また,体育,レクリエーション,視聴覚教育などが行なわれている。とくに,余暇時間の指導には関心がはらわれ,少年たちが自主的に行動するクラブ組織による自治活動がさかんである。
 なお,青少年が思春期特有の心的葛藤や欲求不満などをもっているところから,積極的なカウンセリング活動が行なわれ,また,性格偏倚者の矯正も企てられている。篤志面接委員の活動も活発で,昭和三四年六月現在で,一一四人(うち婦人委員一〇人)の委員が委嘱されて,これにあたっている。

(三) 職業訓練

 昭和三三年中に,刑務作業として,職業訓練をほどこし,それを終了した者の職業訓練の種目と人員とをあげると,指物科一一八人,建築科一九人,活版印刷科三七人,洋裁科七八人,機械科三六人,製靴科三一人,竹細工科二六人,左官およびタイル張り科五人で,計三五〇人となっている。そして,これら刑務作業の種目によるもののほか,青少年受刑者には,特別の職業訓練種目が設けられており,昭和三三年中これを終了した者は,理容科七六人,ラジオ組立科二八人,自動車運転科一七三人,自動車整備科二〇人,自動自転車整備科一〇人,汽缶科二〇人,孔版科七人,電機機械器具修理科一三人,計三四七人で,すすんで,理容師,自動車運転手,同整備士,汽缶士,ラジオ修理技術者などの資格または免許をとるための訓練も行なわれている。