前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第一章/五 

五 諸外国における少年犯罪対策

 少年裁判制度には,保護法的起源のものと刑事法的起源のものとがある。イギリスやアメリカの少年法は前者に,ドイツやフランスの大陸法系少年法は後者に属する。
 イギリスでは,ふるくから,すべての少年に対する保護は,最終的には「国の親」として国王の仕事であり,この仕事は国王によって大法官裁判所に委託されるものであるという考え方があり,この少年の保護の範囲がしだいに犯罪少年の保護にまで拡張されてきたのである。この思想は,アメリカにも継受され,国王に相当するものは州であるとされている。かくて,英米の少年裁判制度は,少年の保護育成ということが主眼となっているのである。
 これに対し,大陸法系の少年法は,人道主義的な近代刑事思想にもとづき,少年に対する刑罰の緩和と,これにともなう少年裁判制度を考案した特別刑事法の体系をなしているのである。
 もとより,右の二つの流れは,比較法的研究の発達につれて,相互に影響しあい,たがいに接近しつつあると思われるが,右に述べたとおり,根本的に基盤の相違があるため,なお,多くの点において,趣を異にするものをのこしている。
 以下,イギリス,アメリカ,ドイツ,フランスの制度と,その運用状況などを概観する。