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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第一章/二/6 

6 少年犯罪の都市集中化

 少年犯罪は,主として,都市にあらわれる。IV-10表は,六大都市とその他の地域とについて,少年犯罪の生起率を比較したものであるが,人口と対比しても,六大都市のほうが,犯罪生起率が高く,他地域の約一・七倍から一・九倍である。しかも,他地域でも,その地域内の小都市において行なわれていることは,容易に想像できる。

IV-10表 六大都市と他地域の少年刑法犯検挙人員と対人口比率等

 少年犯罪の大都市への偏在は,また,罪種によってその程度を異にする。IV-11表は,罪種別に,六大都市における少年犯罪者数の全国における少年犯罪者数に対する構成率をみたものである。

IV-11表 六大都市と他地域の罪種別少年刑法犯検挙人員と率(昭和33年)

 これによって,恐喝,強盗,脅迫などが大都会に偏在しがちな犯罪であることがうかがわれる。これに反し,強姦の六大都市における頻度は,平均値二五・九パーセントに達していない。大都市に恐喝,強盗,脅迫などが多いのは,大都会の盛り場を中心に「やくざ」「ぐれん隊」などの不良集団がいわゆる「ゆすり」「たかり」などを行なうことが多いというわれわれの常識とも一致する。
 つぎのIV-12表IV-13表は,六大都市とその他の地域について,少年犯罪者による脅迫犯と恐喝犯との増加率を比較したものであるが,どちらも,六大都市における増加率は,他地域のそれをはるかに上回っている。

IV-12表 六大都市と他地域の脅迫罪少年検挙者数と指数

IV-13表 六大都市と他地域の恐喝罪少年検挙者数と指数

 最高裁判所家庭局の調査によれば,昭和二九年に主要犯罪によって東京家庭裁判所に送られた七,一三八人の少年犯罪者のうち,一,四四四人(約二〇パーセント)が犯行時に東京都外に居住し,一,一三四人(約一六パーセント)は住居不定者であった。このことは,東京都における少年犯罪の約三分の一(三六パーセント)が外部からの一時的な流入者によるものであることを推測させる。少年犯罪人口の一時的移動現象は,大都市における犯罪現象の一つの特色といえよう。