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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/六/2 

2 統計からみた更生(緊急)保護の状況

(一) 保護観察における応急救護

 保護観察中の対象者について,たとえば適当な仮泊所,住居または職業がないため,更生をさまたげられるおそれがあるというような緊急の保護措置を講ずる必要が生じた場合に,それらの障害をとり除くためにするこの措置は,保護観察所長がみずからこれを行なう場合(自庁保護),更生保護会に委託して行なう場合(委託保護),または,自庁保護と委託保護とをあわせて行なう場合および個人(民間篤志家)や地方公共団体に委託して行なう場合などがあるが,昭和二六年から昭和三三年にいたるその受理人員,自庁保護,委託保護または委託および自庁保護のそれぞれの数は,III-22図a,b,c,dのとおりである。これによると,受理人員は,逐年増加の傾向を示し,昭和三三年には,昭和二六年の約四倍におよんでいる。また,自庁保護,委託保護および個人委託について,その内容別に人員を示したのが,III-54表である。これによると,自庁保護は,帰住援助がもっとも多く,食事供与がこれにつづいており,委託保護は,補導がもっとも多く,これに食事付宿泊供与がつづいている。

III-22図 救護・援護事件の受理人員と処理別(月平均)人員

III-54表 救護・援護の措置別人員

(二) その他の応急救護

 満期出獄者や起訴猶予者など身柄の拘束をとかれた者から保護の申出があった場合に,保護観察所長が必要と認めた者に対しみずからまたは更生保護会などに委託して行なうこの措置の状況は,III-23図およびIII-55表のとおりである。

III-23図 更生保護受理人員

III-55表 更生保護の措置別人員

 これによると,受理人員数は,増加の一途をたどり,昭和三三年には,昭和二六年の約八倍にのぼり,また,更生保護の内容については,自庁保護にあっては,帰住援助が圧倒的に多く,これに公共施設斡旋がつづき,委託保護にあっては,補導,食事付宿泊供与,宿泊供与の順に高率を示している。

(三) 任意保護の実績

 任意保護とは,保護観察所の委託にもとづかないで,更生保護会の発意で実施する保護措置をいい,委託保護期間が経過したのちの対象者に対しひきつづいて保護を加えるものである。その状況は,III-56表にみるとおり,きわめて多い。

III-56表 更生保護会の任意保護人員等

(四) 更生保護会の活動

 救護,援助,更生保護,任意保護において,更生保護会のしめる役割は,きわめて大きいものがある。そこで,更生保護会で行なっている収容保護(食事付宿泊または宿泊)の内容について一言すると,委託保護に対する任意保護の割合は,だいたい五〇パーセント前後を保っている。そして,昭和三三年についてみると,収容定員に対し収容人員は約七五パーセントにすぎず,なお,約二五パーセントの余裕をみせているが,これは委託保護が予算の制約をうけ,その収容定員をみたすことができないために生じたものである。
 更生保護会の保護の目的は,収容者の犯罪性の除去にあるが,その第一の手段は,まず職につけることで,そこから,経済的な安定と自立への道がうまれ,社会生活への順応も可能となる。法務省保護局の調査によれば,昭和三三年に更生保護会に収容保護した者二六,一五八人のうち,同年中に就職した者は,二〇,〇二一人であるが,その者の就職までの期間は,入会後五日以内で就職した者が全体の約四八・五パーセントで,一ヵ月以内には約九二・二パーセントが就職しており,相当の成果をあげているといえる。その職種をみると,全体の約六六・八パーセントが,土工,工夫,人夫といったいわゆる日雇的労務者である。収容者の経歴と現実の社会情勢からみてやむを得ない面も多いであろうが,一考を要するところであろう。