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 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/六/1 

六 更生(緊急)保護

1 更生(緊急)保護の内容

 更生(緊急)保護は,更生緊急保護法により行なわれる保護で,保護観察とちがい,本人の申立によって開始されるものである。
 更生(緊急)保護の対象となる者は,満期釈放者,保護観察のつかない執行猶予者,起訴猶予者,懲役または禁錮について刑の言渡をうけその裁判が確定するまでの者,補導処分終了者などで,これらのうちには,拘禁をとかれていわゆる自由の身となっても,家族や身寄りがなく,当面の衣食住に窮する結果となるといった者が少なくない。これらの者には,本来生活保護法その他社会福祉の制度が保護の手を差しのべなければならないが,そうした社会福祉の保護の措置がとられるには,ある程度の日時を要し,その間の保護の空白は,本人をきわめて不安な情況に陥れ,ふたたび罪を犯させる危険性を多分に生ぜしめ,しかも,これらの人びとは,かつて犯罪を犯したものであり,また犯罪を犯しやすい条件をもっている場合が少なくないから,適切な保護の必要は,いうまでもない。こうした情況にある者に応急の保護の手を差しのべるのが,更生(緊急)保護である。
 更生(緊急)保護は,その対象者が法的には拘束をうけていないものであるから,本人の「保護をうけたい」という申出を前提として実施されるものであって,この点は国家の強制権を内包する保護観察と性格を異にする。しかし,その保護を実施するのは,国の責任でされるものであって,民間の篤志家による従前の釈放者保護とも異なる。また,この保護は,無期限に行なわれるものではなく,その緊急性というたてまえから,「六ヵ月をこえない時期」で,しかも,本人の更生に必要な限度にかぎられている。
 更生(緊急)保護は,これをうけようとする者の申出によって開始されるが,現実には,検察官または監獄の長が,本人に保護の必要を認めまたは本人の希望によって,その保護の必要性その他参考事項を記載した書類を本人に交付し,これを本人が保護観察所長に提示することによって開始される。
 更生(緊急)保護の内容は,つぎのようなものである。(イ)補導,(ロ)宿泊所の供与,(ハ)食事付宿泊の供与,(ニ)食事の供与,(ホ)医療および保養の援助,(ヘ)帰住の援助,(ト)金品の給与または貸与。このうち,(イ)(ロ)(ハ)の三つは,実務上,更生保護会に委託して行なわれている。
 これらの各措置は,保護観察所がみずからまたは更生保護会に委託して行なうのであるが,現在,更生保護会に委託して行なう措置の期間は,予算上の制約のため,つぎのとおりとなっている。
(イ) 宿泊の供与は,通じて六〇日以内(ただし,三〇日以内の延長を認める)
(ロ) 食事付宿泊の供与は,通じて二〇日以内(ただし,一〇日以内の延長を認める)
(ハ) 補導の委託は,宿泊または食事付宿泊の委託にあわせてのみ行なうか,あるいは,その委託期間が経過して,なおひきつづき,その更生保護会が任意の保護として本人に宿泊または食事付宿泊の供与をする場合に,六ヵ月の範囲内で継続して行なうことができる。