前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和35年版 犯罪白書 第三編/第三章/五 

五 婦人補導院の仮退院者に対する保護観察―五号観察

 婦人補導院の仮退院者に対して行なう保護観察を五号観察とよんでいるが,昭和三三年四月から昭和三四年三月までに仮退院を許された者の総数は,四四人である。五号観察は,その保護観察の期間がとくに短いという点に特徴がある。すなわち,補導期間は六ヵ月で,その仮退院を許された期間だけが保護観察の期間となるため,もっとも短いのは一〇日,もっともながいものでも一ヵ月一六日であって,その平均は二八日である。
 昭和三三年中に仮退院を許可された者二五人について,法務省保護局の調査したところによると,
(イ) 帰住先の環境に順応し,生活も安定して,更生の見通しがたち,売春をくりかえすおそれがないと認められる者 二人
(ロ) 生活状態にやや不安定なところがあって,更生の見通しがつくまでにはいたらないが,保護観察は無事に終了し,その後もそのままの状態を継続している者 一〇人
(ハ) 保護観察の当初から,または,その期間中もしくは期間経過後に,所在不明となった者 一一人
(ニ) 内縁の夫が服役しているため生活に窮し,ふたたび売春をはじめるのではないかとおもわれる者 一人
(ホ) ふたたび売春をくりかえし,検挙されたため,仮退院を取り消した者 一人
となっている。
 五号観察は,このように,かならずしも良好な結果をあげているとはいえないが,実施後まだ日が浅く,その成果を口にすべき時期になっているともいえないであろう。ただ,五号観察対象者は,売春常習者で健全な社会生活の経験にとぼしく,不健全な生活態度が習性化しているうえ,知能指数も低く,生活能力も弱いという悪条件の持主が多いのだから,観察期間の短いことがこの保護観察の実施をきわめて困難にしている。