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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第二章/一 

第二章 刑の執行と恩赦

一 死刑の執行

 死刑の判決が確定した者つまり死刑囚は,死刑が執行されるまで刑務所に拘置される。この間の取扱いは,刑事被告人のとおなじである。死刑の執行は,法務大臣の命令によって行なわれるが,この命令は,原則として,判決が確定した後六ヵ月以内に発せられねばならないことになっている。しかし,上訴権回復,非常上告,再審の請求または恩赦の出願がされたとき,および,共同被告人の事件が係属中であるときは,これらの手続が終了するまでの期間は,右の六ヵ月に算入されないし,死刑囚が心神喪失または姙娠中であるため,死刑の執行が停止された期間も,同様とされている。なお,法務大臣が死刑の執行を命令するにあたっては,当該事件の記録によって,再審や非常上告や執行停止や恩赦の事由がないかどうかを慎重に検討し,これらの事由のないのを確かめたのち,執行命令が発せられることになっている。
 死刑囚から再審請求や恩赦の出願をする例が少なくなく,これらの請求や出願があっても,死刑の執行を延期しなければならない法律上の制約はないのであるが,死刑執行の重要性にかんがみ,これらの処分が終了するまでは,原則として死刑の執行をさしひかえる運用がなされている。