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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第二章/二 

二 自由刑の執行

 懲役は,刑務所に拘置して定役に服させ,禁錮は刑務所に拘置し,拘留は拘置場に拘置すると刑法にさだめられているが,この刑の執行を指揮するのは,検察官である。勾留中の被告人について自由刑の判決が確定したときは,検察官の執行指揮で,そのまま自由刑の執行に切りかえられる。勾留などで拘禁されていない被告人は,検察官が,執行のため呼びだし,呼出に応じなければ,収監状を発して収監する。この収監状は,勾引状とおなじ効力をもち,強制力をもちいて引致できるのである。
 自由刑の執行をうけている者が「刑の執行によっていちじるしく健康を害するとき,または生命を保つことができないおそれがあるとき」その他の事由があるときは,検察官の指揮によって刑の執行を停止することができるとされている。また,受刑者が心神喪失の状態にあるときは,法律上,かならずその執行を停止しなければならないとされるが,それは,自由刑の目的が達成できないからである。行刑統計年報によれば,自由刑の執行中に執行停止になった人数は,昭和三〇年に四一二人,昭和三一年に三三三人,昭和三二年に四一七人,昭和三三年には三八三人である。