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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第一章/四/2 

2 第一審の公判審理期間

 司法統計年報で,起訴の日から第一審判決までの審理期間をながめてみよう。
 II-14表15表は,起訴から第一審の終局判決までの期間を年度ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所とを合計したものと,地方裁判所のみのものとに分けてみたものであるが,これによると,大多数の事件,すなわち,総数の約八〇パーセントが,起訴後六ヵ月以内に第一審判決が下されている,ただ,地方裁判所と簡易裁判所とを含めたものと地方裁判所のみのものとを比較すると,前者は,一ヵ月以内および二ヵ月以内の比率が高いのに反して,後者は六ヵ月以内のものが比較的に高い率を示している。これは,地方裁判所が簡易裁判所にくらべて複雑な事件をとりあつかうためと思われる。

II-14表 第一審終局人員の審理期間別百分率(地方・簡易裁判所)

II-15表 地方裁判所における審理期間別百分率

 なお,戦前における第一審終局事件の審理期間別件数を司法統計年報によってみると,II-16表にみるとおり,約半数の事件が一五日以内に処理されており,一ヵ月以内に処理されている事件の総数は,全終局事件の約八〇パーセントにおよんでいる。これをもってみても,現行刑事訴訟法による審理が,旧法に比して長期間を要しているのがわかる。

II-16表 第一審終局事件の審理期間別百分率

 地方裁判所のうちでも,複雑または困難な事件をとりあつかう合議部における審理期間は,どうであろうか。昭和三三年の司法統計年報によると,II-17表にあるように,地方裁判所合議部の終局人員の審理期間はいちじるしく長期化する。すなわち,「六ヵ月以内」で処理されるのは,総数の六四・四パーセントにすぎず,またその一七・三パーセントは一年以上を経過したもので,ことに三年をこえるのが六・五パーセントあるのは注目される。

II-17表 地方裁判所合議部の終局人員の審理期間別百分率(昭和33年)

 さらに,裁判の遅延の問題は,大都市の裁判所で多く論ぜられているので,東京地方裁判所刑事部における審理状況につき,東京地方検察庁公判部の調査(昭和三四年一月から六月末までの間に第一審判決のあった地方裁判所事件)によると,II-18表のとおりである。これによると,起訴後六ヵ月以内で処理されたものは,総数の約七一パーセントで,全国平均よりも低く,また,一年をこえるものは,一三・三パーセントとなっている。ところで,II-19表は,昭和三四年五月二〇日現在で東京地方裁判所刑事部に係属中の事件につき,起訴の日から同日までの期間を調べたものであるが,これによると,係属中の事件の総数の約五〇パーセントは起訴後六ヵ月以内のものであるが,約三〇パーセントは,起訴後一年以上を経過していることがわかる。さらに,これを合議部に係属中の事件についてみると,総数四八五人のうち,一年以内のものが四八パーセントにあたる二三三人であり,一年をこえるものが五二パーセントをしめる二五二人である。

II-18表 東京地方裁判所刑事部終局人員の審理期間別人員と百分率(昭和34年1〜6月)

II-19表 東京地方裁判所刑事部未済人員の審理期間別人員と百分率(昭和34年5月20日現在)

 かように,大都市における地方裁判所の審理期間は,全国平均より長いといわなければならないが,これは,主として,事件の輻輳によるものといえるであろう。したがって,裁判の遅延問題は,大都市における裁判の問題であるともいえよう。
 つぎに,第一審における公判開廷回数をみると,II-20表のとおりである。これによると,総件数の六五パーセントないし六九パーセントは,公判開廷数が三回以内であることがわかる。公判開廷数が一〇回以上にわたるものは,五パーセント前後であるが,この種の事件がいわゆる複雑または困難な事件ということができ,刑事訴訟規則のさだめる継続審理は,この種の事件に適用されねばならないものであろう。

II-20表 第一審公判開廷回数別百分率(%)