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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第一章/四/1 

1 簡易公判手続

 公判は,できるだけ慎重かつ丁重に審理されることが望ましいが,現在の裁判の人員と機構とをもってしては,すべての事件についてこれをまっとうするのは不可能である。簡易な事件は,できるだけ簡単に処理して,その余力を複雑または困難な事件にあて,この種の事件の審理はできるだけ慎重にするということにしなければならない。
 英米法には,アレイメントという制度があり,被告人が「有罪」と陳述すれば,証拠調を一切省略して,判決が宣告されるという簡易な制度であるが,わが刑事訴訟法は,英米法を大幅にとりいれながら,このアレイメント制度を採用しなかった。しかし,これにかわる制度として,簡易公判手続を規定した。この制度は,被告人が,公判手続の冒頭で,起訴状に書かれている訴因について有罪であると陳述したときは,死刑,無期もしくは短期一年以上の懲役,禁錮にあたる事件を除き,裁判所は,簡易公判手続によって審判することができ,この制度では,手続がある程度に簡略化され,証拠調も適当な方法によることができるとされている。
 II-13表は,簡易公判手続の運用状況を示すものであるが,これによると,簡易公判手続のしめる比率がだんだん上昇していることがわかる。もっとも,実際には,公判手続において簡易な審理方法がとられていなかったわけではなく,形式は通常の手続によっていても,実質的には審理の方法をいちじるしく簡略化した方式は,事実上,とられていた。これをできるだけ正規の簡易公判手続にのせるという気運がおこったのも,簡易公判手続のしめる比率が上昇してきた一因であろう。

II-13表 第一審判決人員中の簡易公判人員等