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 昭和35年版 犯罪白書 第一編/第二章/二/3 

3 売春防止法施行後の動向

 売春防止法施行後,売春業者はそれぞれ転廃業したが,料亭,カフェー,飲食店,旅館など,売春に親しみやすい業態にかわったものが少なくなく,従前の売春婦がそのまま女中,女給などとなったものもあるのではないかと推測され,これらの施設が隠密裡に売春に使用されている例もみうけられた。その大規模な一例は,京都の宮川町で,同所では売春婦を芸者とし,業者は芸者置屋,お茶屋などに転業したとみせかけて,巧みに売春業を継続していた。このような動向は,今後いっそう活発となるおそれもある。
 つぎに,従来は赤線区域でなかった地区に,あらたにモグリ売春宿が発生し,または,いわゆるコール・ガール組織やガイド組織を仮装する売春組織などの発生がみられるとされている。これと関連して,ポン引,リンタク屋,円タク運転手などによる周旋組織が形成され,一部には,暴力団がこれに結びついてきているともされている。なお,当然のことながら,街頭売春婦も少なくなく,しかも,その客引は順次巧妙化し,消極的な客待ち形態も多くみられるといわれている。なお,一部の報告によれば,検挙された売春婦のうち,六,七〇パーセントが売春防止法施行後にあらたに売春婦となった者であるとされ,かなり多数の新しい売春婦が発生しているとうかがわれるし,売春婦の相当数はヒモつきであるとされている点や,ヒモがポン引をかねることが多いとされている点なども重視しなければなるまい。
 つぎに,売春防止法の施行にともない,売春婦の性病罹患者が増加したのではないかなどが問題とされ,一部の報告によると,被検挙売春婦中四九パーセント強が性病罹患者であったとされている。また,昭和三三年度中の婦人補導院入院者総数九六人中性病罹患者数は四三人で,入院者総数の約四五パーセントが性病罹患者である(法務大臣官房司法法制調査部の資料による)ことから,売春婦の性病保持者はかなりの高率にのぼっているとおもわれる。強姦その他の性犯罪が増加していることは,統計上明らかであるが,売春防止法施行との相関関係は明らかでない。