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令和元年版 犯罪白書 第3編/第2章/第5節/3

3 少年の保護観察対象者に対する処遇
(1)類型別処遇

保護観察処分少年(交通短期保護観察及び短期保護観察の対象者を除く。)及び少年院仮退院者に対しても,仮釈放者及び保護観察付全部・一部執行猶予者と同様,平成2年から類型別処遇本編第1章第5節3項(2)イ(ア)参照)が実施されている。なお,15年に類型が一部改正され,少年に関する主なものとしては,問題飲酒類型,ギャンブル等依存類型が新たに追加されたほか,家庭内暴力類型として,配偶者暴力類型と児童虐待類型が加わった。3-2-5-6表は,2年・15年・30年の各年末における保護観察処分少年及び少年院仮退院者の類型の認定状況を見たものである。2年は,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれも,シンナー等乱用類型の構成比が最も高く,次いで,暴走族類型となっている。15年は,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれも,暴走族類型の構成比が最も高く,次いでシンナー等乱用類型となっている。30年は,保護観察処分少年,少年院仮退院者のいずれも,15年と比べ,シンナー等乱用類型及び暴走族類型の構成比が低下し,無職等類型,精神障害等類型及び性犯罪等類型の構成比が上昇している。

3-2-5-6表 少年の保護観察対象者の類型認定状況
3-2-5-6表 少年の保護観察対象者の類型認定状況
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(2)段階別処遇

従前は,分類処遇(本編第1章第5節3項(2)ア(ア)参照)が行われていたところ,平成20年6月に更生保護法が施行された(第1編第2章第4節1項(2)並びに本編第1章第5節1項及び同項コラム9参照)ことに伴い,保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対し,段階別処遇同節3項(2)ア(イ)参照)が実施されている(交通短期保護観察及び短期保護観察の対象者を除く。)。なお,殺人等の凶悪重大な事件を起こした保護観察処分少年及び少年院仮退院者に対しては,少年の資質や環境に複雑かつ深刻な問題があるため,段階別処遇において最上位の段階に区分し,保護観察官の関与を深めるとともに,しょく罪指導プログラム(同項(2)イ(エ)参照)を実施するなど,被害者への対応に関する助言指導も行っている。

(3)専門的処遇プログラム

少年の保護観察対象者に対しては,その者の非行事実等に照らして必要と認められる場合,その特性等に十分配慮した上で,専門的処遇プログラムを受けることを生活行動指針として定め,当該プログラムが実施されることがある(本編第1章第5節3項(2)イ(ウ)参照)。

(4)社会参加活動・社会貢献活動

主として少年の保護観察対象者を中心として,社会性等を育むことを目的として,福祉施設における介護,公園清掃等の環境美化活動,陶芸教室,農作業やスポーツ活動等の社会的諸活動を直接体験させるために,平成初期から社会参加活動が行われてきた。統計の存在する最初の年である平成6年度は165回実施され,保護観察対象者436人を含む延べ1,398人が参加した。23年度は,341回実施され,延べ970人の保護観察対象者が参加した。27年6月からは,成人を含めた保護観察処遇の一環として,自己有用感の涵(かん)養,規範意識や社会性の向上を図るため,特別遵守事項の類型として,社会貢献活動が実施されている。社会貢献活動は,23年度から保護観察対象者の同意に基づき先行実施されてきた。23年度は266回実施され,延べ人員として,356人の保護観察処分少年,72人の少年院仮退院者が参加した。30年度は1,343回実施され,延べ人員として,1,221人の保護観察処分少年,258人の少年院仮退院者が参加した(法務省保護局の資料による。社会貢献活動の内容等については,本編第1章第5節3項(2)オ参照)。

(5)就労支援等

少年の保護観察対象者に対しても,法務省と厚生労働省が連携して実施している刑務所出所者等総合的就労支援対策に基づく計画的な就労支援及び更生保護就労支援事業による寄り添い型の就労支援が行われている(本編第1章第5節3項(2)エ及び同節6項(4)ウ参照)。また,19年10月から運営されている沼田町就業支援センターでは,将来の就農に意欲を持つ保護観察処分少年及び少年院仮退院者を宿泊させて,実習農場等において職業訓練を実施している(同節3項(2)カ参照)。

(6)保護者に対する措置

平成19年11月,犯罪者予防更生法が改正され,保護観察所の長は,未成年の保護観察処分少年及び少年院仮退院者の保護者に対し,少年が20歳に達するまでの間,少年の改善更生に資するため,指導,助言その他の適当な措置を執ることができる旨,法律上明記された(同法は20年6月1日,更生保護法に引き継がれた。)。これを受け,保護観察所においては,少年の保護観察対象者の保護者に対し,少年の生活実態等を把握して適切にその監護に当たるべきことや,少年の改善更生を妨げていると認められる保護者の行状を改めるべきことについて指導又は助言を行うほか,保護者会を開催するなどして,少年の非行に関連する問題の解消に資する情報の提供等を行っている。

平成20年度は,保護者会等が9回実施され,74人が参加(保護者等が参加している集団処遇の回数及び同集団処遇における保護者の参加人員)し,30年度は,講習会・保護者会等が52回実施され,357人が参加した(法務省保護局の資料による。)。