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令和元年版 犯罪白書 第2編/第1章/第1節/2

2 主な刑法犯

窃盗は,認知件数において刑法犯の大部分を占める(2-1-1-3図参照)。平成元年以降の窃盗の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移を見ると,2-1-1-9図<1>のとおりである。認知件数は,8年から14年(237万7,488件)まで戦後最多を記録し続けたが,15年から減少に転じ,26年以降,毎年戦後最少を更新し,30年は58万2,141件(前年比7万3,357件(11.2%)減)であった。30年の認知件数は,元年(148万3,590件)の約5分の2,戦後最多であった14年の約4分の1の水準である。検挙件数は,12年に前年比約3割減少した後,一旦増加に転じたが,17年からは減少し続けており,30年は19万544件(前年比1万3,752件(6.7%)減)であった。30年の検挙件数は,平成期最多であった元年(61万9,214件)の約3分の1の水準である。検挙率は,13年に戦後最低の15.7%を記録した後,上昇傾向に転じ,30年は32.7%(前年比1.6pt上昇)であった(2-1-1-1図CD-ROM参照)。

平成元年以降の窃盗を除く刑法犯の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移は,2-1-1-9図<2>のとおりである。認知件数は,12年から15年にかけて前年比16.4~26.5%の勢いで増加を続け,16年には58万1,463件と戦後最多を記録した後,17年から減少し続けている。検挙件数は,18年に22万4,755件と平成期最多を記録した後,19年から減少し続けている。30年と元年を比較すると,認知件数は,30年(23万5,197件)の方が元年(18万9,678件)よりも多く,検挙件数は,30年(11万8,865件)の方が元年(15万3,106件)よりも少ない。検挙率については,10年まで70%以上で推移していたが,12年に前年比12.4pt,13年に同10.1ptそれぞれ低下し,その後も低下し続け,16年には37.8%と戦後最低を記録した。その後,緩やかな上昇傾向にあり,30年は50.5%(前年比3.2pt上昇)であった(2-1-1-1図CD-ROM参照)。

2-1-1-9図 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(窃盗・窃盗を除く刑法犯別)
2-1-1-9図 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(窃盗・窃盗を除く刑法犯別)
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平成元年以降の窃盗の検挙人員及び人口比の推移を犯行時の年齢層別に見ると,2-1-1-10図<1>のとおりである。検挙人員については,元年に他の年齢層と比較して最も多かった少年は,10年に10万10人を記録し,11年から17年までは7~8万人台で推移した後,18年以降減少傾向を示し,30年には1万3,374人まで減少した一方,高齢者は10年に1万人を超えた後も24年(3万5,659人)まで増加傾向を示し,25年以降は他の年齢層と比較して最も多い状態にある。人口比については,30年の少年の人口比は,平成期で最も高かった10年(1,075.2)の約6分の1になっているが,依然として,他の年齢層と比較して最も高い。一方,高齢者の人口比は,23年(119.1)まで上昇傾向を示した後,緩やかに低下し続けている。

平成元年以降の窃盗を除く刑法犯の検挙人員及び人口比の推移について,犯行時の年齢層別に見ると,2-1-1-10図<2>のとおりである。検挙人員については,元年に他の年齢層と比較して最も多かった少年は15年(6万3,556人)をピークに減少し続け,30年では他の年齢層と比較して最も少ない。高齢者は19年(1万7,032人)まで増加傾向を示した後,25年まで減少し続けたが,その後は1万3,000人前後で推移している。人口比について見ると,少年が15年(769.3)をピークに,16年から低下し続けたことから,29年以降は,20~29歳の者の人口比が最も高い。高齢者の人口比は,他の年齢層と比較して一貫して低い(CD-ROM参照)。

2-1-1-10図 刑法犯 検挙人員・人口比の推移(窃盗・窃盗を除く刑法犯別,年齢層別)
2-1-1-10図 刑法犯 検挙人員・人口比の推移(窃盗・窃盗を除く刑法犯別,年齢層別)
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(1)窃盗

窃盗の認知件数の手口別構成比を平成元年・15年・30年について見ると,2-1-1-11図のとおりである。侵入窃盗,乗り物盗及び非侵入窃盗の態様別では,元年は乗り物盗が半数近くを占めていたが,15年及び30年では,非侵入窃盗がそれぞれ過半数を占めている。手口別では,元年は,自転車盗,オートバイ盗,車上・部品ねらいの順,15年は,車上・部品ねらい,自転車盗,オートバイ盗の順,30年は,自転車盗,万引き,車上・部品ねらいの順に多い(手口別の認知件数については,CD-ROM参照)。

2-1-1-11図 窃盗 認知件数の手口別構成比
2-1-1-11図 窃盗 認知件数の手口別構成比
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平成元年以降の窃盗の認知件数の推移について,態様別に見ると,2-1-1-12図<1>,手口別に見ると,2-1-1-12図<2>のとおりである(詳細については,2-1-1-11図CD-ROM参照)。

2-1-1-12図 窃盗 認知件数の推移(態様別,手口別)
2-1-1-12図 窃盗 認知件数の推移(態様別,手口別)
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侵入窃盗の認知件数は,平成の初期はおおむね横ばい状態にあったが,平成10年から14年(33万8,294件)にかけて約10万件増加した後,15年からは減少し続けており,30年(6万2,745件)は,14年の5分の1以下となった(2-1-1-12図<1>)。

侵入窃盗の中で最も多い空き巣の認知件数は,平成の初期は減少傾向にあったところ,平成9年を底として,10年から14年(14万7,500件)まで前年比5.7~18.7%の勢いで増加し,同年には9年(7万9,746件)の約1.8倍に増加したが,その後は減少し続け,30年(2万2,141件)は14年の6分の1以下となった。出店荒し,忍込み及び事務所荒しは,平成の初期はおおむね横ばい状態であったが,出店荒しは13年と14年(4万8,719件)に,忍込みは12年から15年(3万4,893件)までの間に,事務所荒しは10年から12年(5万4,483件)までの間にそれぞれ増加した後,減少傾向を示した。各手口について,30年とピークの年を比較すると,出店荒し(30年8,050件)は14年の約6分の1,忍込み(30年7,484件)は15年の4分の1以下,事務所荒し(30年5,629件)は,12年の9分の1以下となった(2-1-1-12図<2>ア)。

乗り物盗の認知件数は,平成11年までは70万件前後で推移していたが,12年及び13年(82万7,593件)に増加した後,14年からは減少し続けており,30年(20万7,799件)は,13年の約4分の1となった(2-1-1-12図<1>)。

乗り物盗の中で最も多い自転車盗の認知件数は,平成13年をピークに減少傾向を示し,30年(18万3,879件)は,13年(52万1,801件)の約3分の1となった。オートバイ盗は,13年まで20万件台で推移していたが,14年に20万件を下回ると,その後も減少傾向を示し,30年(1万5,292件)は,平成期で最も多かった元年(27万1,083件)の約18分の1となった。自動車盗の認知件数は,9年から増加傾向を示し,15年(6万4,223件)をピークとして,その後は減少傾向を示し,30年(8,628件)は15年の7分の1以下となった(2-1-1-12図<2>イ)。

非侵入窃盗の認知件数は,平成3年から14年(126万3,759件)にかけて増加し続け,同年には増加前の2年(52万7,431件)の約2.4倍の水準に達したが,15年からは減少し続けており,30年(31万1,597件)は14年の約4分の1となった(2-1-1-12図<1>)。

非侵入窃盗のうち万引きの認知件数は,平成元年から8年まで10万件を下回っていたが,9年からは10万件を超え,16年(15万8,020件)をピークに14年から23年までは毎年14万件を超える状況が続いた。24年に14万件を下回った後は減少し続けており,30年(9万9,692件)はおよそ20年振りに10万件を下回った。もっとも,平成期で最も少なかった4年(6万6,852件)と比較すると,30年の認知件数は,なお約1.5倍である。車上・部品ねらいの認知件数は,9年から14年(57万1,837件)まで増加し続けたが,15年からは減少し続けており,30年(6万5,935件)は,14年の約9分の1となった。自動販売機ねらいの認知件数は,3年から11年(22万2,328件)にかけて増加し続け,同年には増加前の2年(3万2,721件)の約6.8倍の水準に達したが,15年からは減少し続け,30年(6,881件)は11年の32分の1以下となった(2-1-1-12図<2>ウ)。

ひったくりの認知件数は,平成3年から14年(5万2,919件)にかけて増加し続け,同年には増加前の2年(1万115件)の約5.2倍に達したが,15年からは減少し続けており,30年(1,920件)は14年の27分の1以下となった。すりの認知件数は,元年から15年にかけて2万件を超える状況が続いていたが,16年からは減少傾向を示し,30年(3,281件)は,平成期で最も多かった5年(3万217件)の9分の1以下となった。払出盗は,17年(5,193件)をピークに,18年から減少し続けていたが,28年から再び増加に転じ,30年は3,906件(前年比1,301件(49.9%)増)であった(2-1-1-12図<2>エ)。

窃盗の検挙件数の手口別構成比を平成元年・15年・30年について見ると,2-1-1-13図のとおりである。侵入窃盗,乗り物盗及び非侵入窃盗の態様別では,いずれの年も非侵入窃盗の占める割合が最も高く,元年はこれに乗り物盗,侵入窃盗と続いたが,15年及び30年は侵入窃盗が乗り物盗を上回った。手口別では,元年は,車上・部品ねらい,万引き,自転車盗の順,15年は,万引き,車上・部品ねらい,空き巣,30年は,万引き,車上・部品ねらい,空き巣の順であった。万引きの占める割合は,元年には約7分の1,15年には約4分の1であったのが,30年には3分の1を超えた(手口別の検挙件数については,CD-ROM参照)。

2-1-1-13図 窃盗 検挙件数の手口別構成比
2-1-1-13図 窃盗 検挙件数の手口別構成比
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窃盗の検挙率を態様別・手口別で見ると,侵入窃盗では,平成元年が64.9%,15年が33.0%,30年が62.5%,乗り物盗では,元年が25.3%,15年が8.2%,30年が8.9%,非侵入窃盗では,元年が52.0%,15年が22.1%,30年が42.6%であった。なお,非侵入窃盗のうち万引きは,元年が92.2%,15年が73.1%,30年が71.6%であった(警察庁の統計による。)。

(2)強制性交等・強制わいせつ

平成元年以降の強制性交等(平成29年法律第72号による刑法改正前は強姦及び準強姦であり,改正後は強姦,準強姦,準強制性交等及び監護者性交等を含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移は,2-1-1-14図のとおりである。認知件数は,8年まではおおむね横ばい状態にあったところ,9年から増加傾向を示し,15年に2,472件を記録した後,おおむね減少傾向にあったが,24年・25年にやや増加するとともに,29年から増加し,30年は1,307件(前年比198件(17.9%)増。なお,前記改正によって対象が拡大した点には留意する必要がある。)であり,うち女性を被害者とするものは1,251件であった(6-1-1-5図参照)。検挙件数も15年に1,569件を記録した後,減少傾向にあったが,29年から増加し,30年は1,190件(前年比163件(15.9%)増)であった。検挙率は,10年から低下し,14年に62.3%と戦後最低を記録し,その後は上昇傾向にあったものの,29年から低下し,30年は91.0%(前年比1.6pt低下)であった(CD-ROM参照)。

このうち,平成30年における監護者性交等の認知件数は65件であり,検挙件数は60件,検挙率は92.3%であった(警察庁刑事局の資料による。)。

なお,肛門性交のみ,口腔性交のみ,又は肛門性交及び口腔性交のみを実行行為とする強制性交等について,平成30年に第一審判決があったものとして法務省刑事局に対し各検察庁から報告があった件数は,57件であった(法務省刑事局の資料による。)。

2-1-1-14図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
2-1-1-14図 強制性交等 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
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平成元年以降の強制わいせつ(前記改正前は準強制わいせつを含み,前記改正後は準強制わいせつ及び監護者わいせつを含む。)の認知件数,検挙件数及び検挙率の推移は,2-1-1-15図のとおりである。認知件数は,平成の初期から増加傾向にあったが,11年から13年にかけて前年比25.8~38.6%の勢いで増加し続け,15年には昭和41年以降で最多の1万29件を記録した。その後,平成21年まで減少し,22年から25年まで増加傾向にあったが,26年から減少し続け,30年は5,340件(前年比469件(8.1%)減。なお,前記改正によって対象が縮小(口腔性交及び肛門性交が,強制性交等の対象行為となった。)及び拡大(監護者わいせつが新設された。)した点には留意する必要がある。)であった。検挙件数は,5年から25年までは3,000件台,26年以降は4,000件台で推移しており,30年は4,288件(前年比32件(0.7%)減)であった。検挙率は,11年に前年比18.9pt,12年に同14.8pt低下し,14年には35.5%と昭和41年以降で最低を記録したが,その後は上昇傾向にあり,平成30年は80.3%(前年比5.9pt上昇)であった(CD-ROM参照)。

このうち,平成30年における監護者わいせつの認知件数は61件であり,検挙件数は63件,検挙率は103.3%であった(警察庁刑事局の資料による。)。

2-1-1-15図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
2-1-1-15図 強制わいせつ 認知件数・検挙件数・検挙率の推移
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強制性交等,強制わいせつの検挙人員について,犯行時の年齢層別構成比の平成元年以降の推移を見ると,2-1-1-16図のとおりである。20~29歳及び30~39歳の者の占める割合は,平成期を通じて,強制性交等では6割前後,強制わいせつでは5割前後を占めている。他方,少年の占める割合は低下傾向にあり,30年は,元年と比べると,強制性交等では約5分の2,強制わいせつでは約3分の1になったが,近年はおおむね横ばい状態である。近年の刑法犯検挙人員に占める高齢者の占める割合の上昇(2-1-1-5図参照)は,強制性交等,強制わいせつにおいても認められ,30年における高齢者の占める割合は,元年と比べて,強制性交等では2.9pt上昇(検挙人員は8人から38人に増加),強制わいせつでは8.5pt上昇(検挙人員は7人から268人に増加)した(CD-ROM参照)。

2-1-1-16図 強制性交等・強制わいせつ 検挙人員の年齢層別構成比の推移
2-1-1-16図 強制性交等・強制わいせつ 検挙人員の年齢層別構成比の推移
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(3)その他の刑法犯

窃盗及び強制性交等・強制わいせつを除く刑法犯について,主な罪名・罪種ごとに認知件数の推移(平成元年以降)を見ると,2-1-1-17図のとおりである。平成期において増減の幅がとりわけ大きかったのは器物損壊である。また,3年から11年までの間は,横領(遺失物等横領を含む。)が詐欺や器物損壊を上回っていた。

2-1-1-17図 その他の刑法犯 認知件数の推移(罪名・罪種別)
2-1-1-17図 その他の刑法犯 認知件数の推移(罪名・罪種別)
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認知件数,検挙件数及び検挙率の推移(平成元年以降)を罪名別に見ると,2-1-1-18図のとおりである(詳細については,CD-ROM資料2-2及び2-3参照)。

なお,盗品譲受け等,公然わいせつ,わいせつ物頒布等,略取誘拐・人身売買,通貨偽造,文書偽造等及び賭博・富くじの認知件数等についてはCD-ROM参照。

2-1-1-18図 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(罪名別)
2-1-1-18図 刑法犯 認知件数・検挙件数・検挙率の推移(罪名別)
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ア 殺人(2-1-1-18図<1>

殺人の認知件数は,平成期前半はおおむね1,200件台から1,300件台で推移し,平成15年及び16年に1,400件台を上回ったが,16年から28年までは減少傾向にあり,28年に戦後最少の895件を記録した。その後はおおむね横ばいで推移し,30年は915件(前年比5件(0.5%)減)であった。検挙率は,安定して高い水準(30年は96.8%)にある。

イ 強盗(2-1-1-18図<2>

強盗の認知件数は,平成元年の1,586件から毎年増加し,7年に一時的に減少したものの,再び8年から増加し続け,15年に昭和26年以降で最多の7,664件を記録した後,平成16年から減少傾向にあり,30年は1,787件(前年比65件(3.5%)減)であった。検挙率は,8年から減少し続け,13年から16年まではおおむね横ばいで推移した後,17年から上昇傾向にあり,30年は87.2%(同5.1pt上昇)であった。

平成元年・15年・30年における強盗の認知件数の手口別構成比は,2-1-1-19図のとおりである。30年は,元年・15年と比べ,侵入強盗の割合が低い。

2-1-1-19図 強盗 認知件数の手口別構成比
2-1-1-19図 強盗 認知件数の手口別構成比
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ウ 傷害・暴行・脅迫(2-1-1-18図<3>~<5>

傷害,暴行及び脅迫の認知件数は,平成期において,いずれも平成元年以降11年までおおむね横ばいであったところ,12年に急増した。傷害の認知件数は,15年(3万6,568件)まで増加していたが,20年以降は2万件台で推移しており,30年は2万2,523件(前年比763件(3.3%)減)であった。暴行の認知件数は,18年以降おおむね高止まりの状況にあり,30年は3万1,362件(同349件(1.1%)増)であった。脅迫の認知件数は,12年以降2,000件台で推移していたが,24年に更に増加して3,000件台を記録し,30年は3,498件(同353件(9.2%)減)であった。いずれの検挙率も,16年前後まで低下傾向にあったが,その後はおおむね上昇傾向にある。

エ 詐欺(2-1-1-18図<6>

詐欺の認知件数は,平成期において,平成元年以降13年まで横ばいないし減少傾向にあったが,14年から増加に転じ,17年に昭和35年以降で最多の8万5,596件を記録した。その後,平成18年から減少に転じ,24年からは増加傾向を示していたが,30年は前年より減少し,3万8,513件(前年比4,058件(9.5%)減)であった。検挙率は,12年から大幅に低下し続け,16年に32.1%と戦後最低を記録した後,17年から上昇に転じ,23年から26年までの低下を経て,その後はおおむね横ばいで推移し,30年は42.8%(同1.9pt上昇)であった。

特殊詐欺(被害者に電話をかけるなどして対面することなく欺もうし,指定した預貯金口座へ振り込ませるなどの方法により,不特定多数の者から現金等をだまし取る犯罪(恐喝も含む。)の総称。以下この項において同じ。)のうち,振り込め詐欺及びそれ以外の特殊詐欺の認知件数,検挙件数及び被害総額(被害者がキャッシュカードを犯人に直接手渡すなどする「キャッシュカード手交型」の特殊詐欺におけるATMからの引出(窃取)額を含まない。以下この項において同じ。)の推移(統計の存在する平成16年以降)は,2-1-1-20図のとおりである。特殊詐欺全体について,振り込め詐欺以外に関する統計の存在する22年ないし23年以降を見てみると,認知件数は,23年から増加していたが,30年は前年より減少(9.4%減)し,検挙件数は,27年から増加し続け,30年も前年より増加(11.1%増)したが,振り込め詐欺以外の特殊詐欺では,認知件数,検挙件数共に,前年より減少(それぞれ36.4%減,53.0%減)した。また,30年は,振り込め詐欺以外の特殊詐欺の被害総額が前年より大きく減少(52.5%減)するとともに,特殊詐欺全体としての被害総額も,約293億円に減少(前年比12.4%減)した(なお,「キャッシュカード手交型」の特殊詐欺におけるATMからの引出(窃取)額を含めると約364億円。警察庁刑事局の資料による。)。

振り込め詐欺の認知件数は,平成21年(7,340件)に前年(2万481件)より大きく減少(64.2%減)したが,24年から増加し続けており,30年は1万6,314件と,23年(6,233件)の約2.6倍であった。また,振り込め詐欺の被害総額は,21年(約96億円)に前年(約276億円)より大きく減少(65.3%減)し,23年から27年まで増加を続けた後,28年から減少しているものの,30年は約285億円と,22年(約82億円)の約3.5倍であった(警察庁刑事局の資料による。)。

2-1-1-20図 特殊詐欺 認知件数・検挙件数・被害総額の推移
2-1-1-20図 特殊詐欺 認知件数・検挙件数・被害総額の推移
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オ 恐喝(2-1-1-18図<7>

恐喝の認知件数は,平成4年から増加傾向にあり,13年に1万9,566件を記録したが,14年から減少しており,30年は1,753件(前年比193件(9.9%)減)であった。

カ 横領(2-1-1-18図<8>

横領(遺失物等横領を含む。)の認知件数は,平成期において,平成6年まで増加した後,7年から増減を繰り返し,16年に戦後最多の10万4,412件を記録したが,17年から減少しており,30年は1万9,971件(前年比1,850件(8.5%)減)であった。

キ 放火(2-1-1-18図<9>

放火の認知件数は,平成期において,前半は増減を繰り返しながらも,全体として増加傾向にあったが,平成16年に2,174件を記録した後,17年から減少傾向にあり,30年は891件(前年比68件(7.1%)減)であった。

ク 公務執行妨害(2-1-1-18図<10>

公務執行妨害の認知件数は,平成6年から増加傾向にあり,18年に戦後最多の3,576件を記録したが,その後は減少傾向にあり,30年は2,375件(前年比41件(1.7%)減)であった。

ケ 住居侵入(2-1-1-18図<11>

住居侵入の認知件数は,平成期において,平成元年以降7年まで横ばいであったところ,8年から増加し,15年に戦後最多の4万348件を記録したが,16年から減少傾向にあり,30年は1万3,048件(前年比1,863件(12.5%)減)であった。

コ 器物損壊(2-1-1-18図<12>

器物損壊の認知件数は,平成期に入り増加傾向を示す中,平成12年から急増したが,15年の23万743件をピークに,16年から減少しており,30年は7万8,371件(前年比1万4,336件(15.5%)減)であった。なお,平成18年版犯罪白書では,「7年から14年までの期間における窃盗を除く刑法犯の急増の主要因となったのが器物損壊であることから,その実態について更に検討する」として,17年における器物損壊の内容別構成比を見た上で,「被害器物等の半数以上を車両が占め,発生場所も駐車(輪)場と道路上の合計が約50%となっている。窃盗において,同期間に車上ねらいが急増しており,同期間における刑法犯の急増は,車を対象としたものが中心であったことがうかがわれる」旨記載している。検挙率は,15年まで低下傾向を示した後,16年から若干上昇傾向にあり,30年は11.7%(同1.2pt上昇)であったが,依然,刑法犯全体と比べて著しく低い。