平成30年における刑法犯の主な統計データは,次のとおりである。
なお,この項では,これまでの犯罪白書の統計との比較の便宜上,危険運転致死傷・過失運転致死傷等に係る数値を参考値として掲載している(交通犯罪については,第4編第1章参照)。
<1> 認知件数
(前年比) | [平成元年比・15年比] | |||
刑法犯 | 817,338件 | (-97,704件,-10.7%) | [-51.2%・-70.7%] | |
窃盗を除く刑法犯 | 235,197件 | (-24,347件,-9.4%) | [+24.0%・-57.6%] | |
(参考値) | ||||
刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 1,231,307件 | (-137,048件,-10.0%) | [-45.5%・-66.2%] | |
うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 413,969件 | (-39,344件,-8.7%) | [ …・-51.6%] | |
うち危険運転致死傷 | 613件 | (-57件,-8.5%) | [ …・+99.0%] | |
うち過失運転致死傷等 | 413,356件 | (-39,287件,-8.7%) | [-29.7%・-51.7%] |
<2> 検挙件数
(前年比) | [平成元年比・15年比] | ||
刑法犯 | 309,409件 | (-17,672件,-5.4%) | [-59.9%・-52.3%] |
窃盗を除く刑法犯 | 118,865件 | (-3,920件,-3.2%) | [-22.4%・-44.6%] |
<3> 検挙人員
(前年比) | [平成元年比・15年比] | |||
刑法犯 | 206,094人 | (-8,909人,-4.1%) | [-34.2%・-45.7%] | |
窃盗を除く刑法犯 | 103,725人 | (-2,040人,-1.9%) | [-11.8%・-44.9%] | |
(参考値) | ||||
刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 631,037人 | (-49,267人,-7.2%) | [-32.5%・-50.3%] | |
うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 424,943人 | (-40,358人,-8.7%) | [ …・-52.3%] | |
うち危険運転致死傷 | 606人 | (-47人,-7.2%) | [ …・+96.8%] | |
うち過失運転致死傷等 | 424,337人 | (-40,311人,-8.7%) | [-31.7%・-52.3%] |
<4> 発生率
(前年比) | [平成元年比・15年比] | ||
刑法犯 | 646.4 | ( -75.8) | [-711.7・-1,538.6] |
窃盗を除く刑法犯 | 186.0 | ( -18.8) | [+32.1・-248.1] |
(参考値) | |||
刑法犯・危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 973.8 | (-106.1) | [-861.4・-1,881.7] |
うち危険運転致死傷・過失運転致死傷等 | 327.4 | ( -30.4) | [ …・-343.0] |
うち危険運転致死傷 | 0.5 | ( -0.0) | [ …・+0.2] |
うち過失運転致死傷等 | 326.9 | ( -30.3) | [-150.2・-343.3] |
<5> 検挙率
(前年比) | [平成元年比・15年比] | ||
刑法犯 | 37.9% | (+2.1pt) | [-8.3pt・+14.6pt] |
窃盗を除く刑法犯 | 50.5% | (+3.2pt) | [-30.2pt・+11.9pt] |
注 警察庁の統計及び総務省統計局の人口資料による。
刑法犯の認知件数,検挙人員及び検挙率の推移(昭和21年以降)は,2-1-1-1図のとおりである(CD-ROM資料2-1参照)。
刑法犯の認知件数は,平成期において,平成元年から年々増加傾向にあり,8年からは毎年戦後最多を更新して14年には285万4,061件にまで達したが,15年に減少に転じて以降,16年連続で減少しており,30年は81万7,338件(前年比9万7,704件(10.7%)減)と戦後最少を更新した。戦後最少は27年以降,毎年更新中である。平成期の認知件数の増減は,刑法犯の7割以上を占める窃盗の認知件数が大幅に増減した(窃盗の詳細については,本節2項参照)ことに伴うものである。元年及び15年と比較すると,窃盗については,30年の認知件数(58万2,141件)は元年の認知件数(148万3,590件)より60.8%少なく,15年の認知件数(223万5,844件)より74.0%少ない(2-1-1-1図CD-ROM参照)。
刑法犯の発生率の動向は,認知件数の動向とほぼ同様である。平成元年以降,上昇傾向にあり,14年には戦後最高の2,238.7を記録したが,15年から低下に転じ,25年からは毎年戦後最低を記録している(2-1-1-1図CD-ROM参照)。
2-1-1-2表は,平成元年・15年・30年における刑法犯の認知件数・発生率等を見るとともに,30年については,これらを更に罪名別に見たものである。30年における認知件数が窃盗に次いで多かったのは,順に器物損壊,詐欺,暴行,傷害であり,遺失物等横領はこれらを下回る。
平成元年・15年・30年における刑法犯の認知件数の罪名別構成比は,2-1-1-3図のとおりであり,いずれの年についても,窃盗が最も高く,元年は88.7%,15年は80.1%,30年は71.2%であった。次いで高いのは,元年は詐欺(3.2%),横領(遺失物等横領を含む。以下この節において同じ。)(2.0%)の順,15年は器物損壊(8.3%),横領(3.3%)の順であったのに対し,30年は,器物損壊(9.6%),詐欺(4.7%)の順であった。
刑法犯の検挙人員は,平成元年以降,しばらく30万人前後で推移していたが,13年から増加し続け,16年には38万9,297人を記録したが,17年から減少に転じて,25年からは毎年戦後最少を記録しており,30年は20万6,094人(前年比8,909人(4.1%)減)であった。検挙人員の増減のカーブは,認知件数と比べ緩やかである(2-1-1-1図CD-ROM参照)。元年・15年・30年における刑法犯の検挙人員の罪名別構成比は,2-1-1-4図のとおりであり,いずれの年についても窃盗が最も高く,元年は62.4%,15年は50.4%,30年は49.7%であった。次いで高かったのは,元年は横領(11.4%),傷害(8.0%)の順,15年も横領(23.8%),傷害(7.6%)の順だったのに対し,30年は,暴行(12.9%),傷害(10.1%)の順であった。同年における罪名別の検挙人員については,2-1-1-2表参照。
刑法犯について,検挙人員の年齢層別構成比の推移(平成元年以降)を見ると,2-1-1-5図のとおりである(男女別の年齢層別検挙人員の推移については,CD-ROM参照)。20歳未満の者の構成比は,元年は52.9%(16万5,686人),15年は38.3%(14万5,448人)だったのに対し,30年は,11.6%(2万3,970人)にとどまり,20歳未満の若年齢層の比率の低下が進んでいる。他方,65歳以上の高齢者の構成比は,元年には2.1%(6,625人),15年には7.8%(2万9,804人)だったのに対し,30年は21.7%(4万4,767人)を占めており,検挙人員に占める高齢者の比率の上昇が進んでいる(CD-ROM参照。高齢者犯罪の動向については,第4編第8章参照)。
2-1-1-6表は,平成元年・15年・30年における刑法犯の検挙人員を男女別に見るとともに,30年については,これを更に罪名別に見たものである。女性比は,元年が21.2%,15年は21.0%,30年は20.9%であり,また,30年においては,男女共に,窃盗による検挙人員が最も多かった(女性犯罪の動向については,第4編第7章参照)。
刑法犯の検挙率は,平成7年から毎年低下し,13年には19.8%と戦後最低を記録したが,14年から回復傾向にあり,一時横ばいで推移していたものの,26年以降再び上昇しており,30年は37.9%(前年比2.1pt上昇)であった(2-1-1-1図参照)。
平成元年・15年・30年における刑法犯の検挙率を見るとともに,30年については,これを更に罪名別に見ると,2-1-1-2表のとおりである。
平成元年・15年・30年における刑法犯の認知件数,発生率等を都道府県別に見ると,2-1-1-7図のとおりである。元年と比較すると,15年は,いずれの都道府県についても発生率が上昇しているのに対し,30年は,いずれの都道府県についても低下している。もっとも,都道府県別の認知件数と発生率は,認知した都道府県警察の管轄区域によるものであり,警察が発生を認知した事件が,必ずしも発生した都道府県の居住者によるものとは限らない点に留意が必要である。
平成元年・15年・30年における刑法犯の検挙人員,人口比等を都道府県別に見ると,2-1-1-8図のとおりである。元年と比較すると,15年は,ほとんどの都道府県で増加しているのに対し,30年は,ほとんどの都道府県で減少している。もっとも,都道府県別の検挙人員と人口比は,検挙した都道府県警察の管轄区域によるものであり,検挙された者が必ずしも検挙した都道府県の居住者とは限らない点に留意が必要である。