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平成25年版 犯罪白書 第6編/第4章/第1節/4

4 女子の再入所状況

6-4-1-10図は,平成20年の女子の出所受刑者について,出所年を含む5年以内の累積再入率(各年の年末までに再入所した者の累積人員の比率をいう。以下この項において同じ。)を見るとともに,これを罪名別に見たものである。女子の出所受刑者の出所年を含む5年以内の累積再入率は30.5%であり,男子の同比率(40.6%)に比して低い(法務省大臣官房司法法制部の資料による。男女総数は4-1-3-4図参照)。しかし,罪名別に見ると,強盗,放火及び傷害・暴行の女子の出所受刑者の5年以内の累積再入率は,それぞれ5%前後であるが,窃盗は45.1%と,男子の同比率(48.5%)と同程度に高く,覚せい剤取締法違反も38.2%と,男子の同比率(50.7%)ほどではないものの高い(法務省大臣官房司法法制部の資料による。男女総数は4-1-3-5図参照)。


6-4-1-10図 女子の出所受刑者の5年以内累積再入率(罪名別)
6-4-1-10図 女子の出所受刑者の5年以内累積再入率(罪名別)
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女子受刑者特有の問題性に対応している最近の女子刑事施設の処遇について,その実情を紹介する。


コラム 刑事施設の取組(その1)

女子を対象としたA刑事施設は,緑に囲まれた,開放的構造を持つ施設で,「対象者の特性に応じた処遇」を運営方針の第一に掲げている。近年の入所受刑者は,覚せい剤取締法違反又は窃盗による者が大半を占め,年齢は20歳代から80歳代まで幅が広い。

A刑事施設では,特別改善指導の薬物依存離脱指導において,入所度数や問題性に応じて受講者を4つの類型に分け,それぞれ,少人数のグループ指導,個別指導及びダルクミーティングを実施するなど再犯防止のための指導に取り組んでいる。このうち,少人数のグループ指導は,初入者グループと再入者グループに分けた上,それぞれテキストを用いて,薬害の知識や再犯防止のための手立てなどを指導している。ダルクミーティングは,再入者を対象とし,ダルク(民間の薬物依存者リハビリテーション施設)のスタッフを招へいして実施している。

また,A刑事施設では,窃盗による入所受刑者の増加に対応し,平成20年度から,一般改善指導において,窃盗問題指導を実施している。この窃盗問題指導は,窃盗による入所受刑者8人程度を対象に,3か月間,月2回,認知行動療法を基盤として開発した教材を用いてグループワークを実施し,受講者が,窃盗をしていた当時の物の見方や考え方について検討し,誤った認知があればそれを修正し,また,建設的な問題解決方法を身につけ,問題行動を回避することを目指している。

A刑事施設の窃盗による受刑者には,比較的高齢になってから窃盗をするようになった者が多く,万引きの手口で,食品や日用品などの比較的小額なものを盗む者が多い。また,検挙に至るまでに複数回窃盗を繰り返しても発覚しなかった体験が,規範意識を低下させているように見受けられる者が少なくない。指導の初期の段階では,自己の問題行動を正当化したり,「大したことではない」と矮(わい)小化したりする者もいるが,グループワークにより,自己の問題行動の洞察が深まり,問題解決への意欲が高まる様子が見受けられる。


コラム 刑事施設の取組(その2)

女子を対象としたB刑事施設は,全国の女子受刑者の約1割を収容しており,A刑事施設同様に,覚せい剤取締法違反又は窃盗による入所者が多く,年齢も幅が広い。

B刑事施設では,高齢受刑者の増加を背景に,一般改善指導において,高齢受刑者の再犯防止,社会復帰に向けた様々な処遇を行っている。

その一つが,窃盗防止を意図した「行動適正化指導」である。窃盗等により受刑している高齢者を小グループに編成し,それぞれの過去の問題行動を振り返らせ,犯罪に至る状況やきっかけなどについて自己洞察を深めさせ,再犯防止の方策を見出させる,認知行動療法を基盤とした指導プログラムである。窃盗に及ぶ者は,生活が極めて困窮している者ばかりではなく,手持ちの生活費が減ることの不安や,衝動を抑えられない者なども少なくなく,その要因には根深いものが見受けられる。指導プログラムにより,自己の問題を客観視するようになり,再犯防止の手がかりを得る者も少なくないが,一方,認知のゆがみを修正しようとする意識や能力に乏しい者もおり,常に指導方法を見直しながら処遇を進めている。

さらに,高齢受刑者の社会復帰には,自分の心身の健康に目を向けさせ,適度の体力を保持させることが重要であることから,数年前から「高齢者健康指導」として,日常生活でよく行われる主要動作(歩行,階段昇降,更衣,入浴)に必要な「生活体力」を維持,増進させる運動の指導を行っていた。平成25年度においては,それを発展させ,「高齢者運動講座」として,外部専門家と連携し,生活習慣病を予防し,健康水準を保持,増進するための運動指導を実施している。

近年の新たな問題は,摂食障害を患う受刑者の増加である。健康保持に向けて医師の助言・指導を受けながら,食事の様子の観察,身体チェック(食べ物を隠し持つことなどがあるため),総合栄養流動食の給与等慎重に対応しているが,処遇困難な者も少なくない。

また,入所者全体を対象とした就労支援として,就労支援スタッフを中心に,ライフプランを見据えた職業観の醸成と,保護観察所,公共職業安定所,協力雇用主,都道府県就労支援事業者機構等との連携による出所後の早期就労の調整に努めている。受刑者には,他者に経済的に依存した生活を送っていた者が多く見受けられ,就労意欲が乏しい者も見られる。B刑事施設においては,そうした状況を踏まえ,これまでの生活歴や職歴を個々に振り返らせ,子育てや家事従事等を含め,短期的視点のみならず,中・長期的視点を持って,自己の特性をいかしつつ,生活基盤を整える方策を考えるよう働きかけ,相応の成果を挙げている。