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平成22年版 犯罪白書 第7編/第1章/1節/2

2 被害者

(1)死傷者数

7‐1‐1‐2表は,重大事犯による平成21年の死傷者数及び11年から20年までの死傷者数(年平均)を見たものである。21年における死者は,殺人で506人,傷害致死で129人,強盗で36人,放火で25人であった。

7‐1‐1‐2表  死傷別被害者数(罪名別)

(2)被害者の年齢

7‐1‐1‐3図は,殺人,傷害致死及び強姦の認知事件について,平成21年における被害者の年齢層別構成比を見たものである。殺人及び傷害致死では,65歳以上の高齢者の構成比がそれぞれ21.9%,28.9%と高く(人が被害者となった一般刑法犯では10.6%。第5編第1章第1節参照),また,12歳以下の者もそれぞれ7.2%,10.9%を占めている。強姦では,被害者の半数近くは未成年者であり,12歳以下の者も3.8%を占めている。

7‐1‐1‐3図  被害者の年齢層別構成比(罪名別)

(3)被疑者と被害者との関係

7‐1‐1‐4図は,重大事犯(人が被害者となった事件に限り,また,捜査の結果,犯罪が成立しないこと又は訴訟条件・処罰条件を欠くことが確認された事件を除く。)について,被疑者と被害者との関係別の検挙件数並びに親族率(検挙件数に占める被害者が被疑者の親族である事件の比率。殺人,傷害致死及び放火に限る。)及び面識率(検挙件数に占める被害者が被疑者の親族及び親族以外の面識者である事件の比率)の推移(最近30年間。ただし,傷害致死については平成元年以降)を見たものである。

殺人及び傷害致死では,面識率は,それぞれ,おおむね,80%台後半,80%台で推移し,非常に高い水準にある。親族に対する殺人の検挙件数は,昭和50年代の後半には600件台であった後,減少していたが,平成4年から増加傾向にあり(21年は467件),その増加に伴い,殺人の親族率も,上昇し,最近は,50%に近い。傷害致死の親族率も,最近は,50%に近い。強姦では,面識のある者に対する事件の検挙件数は,3年まで減少していた後,8年以降増加し,12年以降も横ばい状態であり,これに伴い,面識率は,8年以降,上昇傾向にあり,21年は,41.9%であった。強姦の親族率は,低いが,16年以降上昇傾向にあり,21年は4.6%であった。放火では,面識率及び親族率は,それぞれ,おおむね50%台,20%台で推移していたが,最近,面識がない者に対する事件の検挙件数が減少し,同年は,それぞれ,65.0%,33.1%であった。なお,一般刑法犯全体では,面識率は,窃盗で低いこと(同年は4.7%)が大きな要因であるが,最近10年間,約9〜12%で推移している(第5編第1章第5節参照)。

7‐1‐1‐4図  被疑者と被害者との関係別検挙件数・面識率・親族率の推移(罪名別)

7‐1‐1‐5図は,親族に対する殺人について,被害者の続柄別の検挙件数の推移(最近30年間)を見たものである。嬰児殺が著しい減少傾向にある一方,親に対する殺人は大幅な増加傾向にある。

7‐1‐1‐5図  殺人 被害親族の種類別検挙件数の推移

なお,通り魔殺人事件(人の自由に出入りできる場所において,確たる動機がなく通りすがりに,不特定の者を凶器を使用するなどして殺害する事件をいい,未遂を含む。)の認知件数は,平成17年が6件,18年が4件,19年が8件,20年が14件,21年が4件であり,いずれも,被疑者は検挙されている(警察庁刑事局の資料による。)。