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 平成21年版 犯罪白書 第4編/第2章/第6節/2 

2 少年の保護観察対象者に対する処遇

(1)段階別処遇制度

 平成20年6月から更生保護法が施行されたことに伴い,従来の分類処遇制度に代わり,保護観察処分少年(短期保護観察及び交通短期保護観察に付された者を除く。)及び少年院仮退院者に対し,段階別処遇による体系的な保護観察(第2編第5章第2節2項(2)参照)が実施されている。

(2)類型別処遇制度

 4-2-6-7表は,保護観察処分少年(交通短期保護観察の対象者のほか,保護観察期間が10月以内の短期保護観察の対象者を除く。)及び少年院仮退院者について,平成20年12月31日現在の類型別処遇制度(第2編第5章第2節2項(3)参照)に基づく類型認定の状況を見たものである。

4-2-6-7表 少年の保護観察対象者の類型認定状況

(3)指導等の充実

 少年の保護観察対象者についても,成人の保護観察対象者と同様に,特別遵守事項を保護観察中の状況に応じて設定・変更することが可能であり,また,処遇に特段の配慮を要する者に対しては,保護観察官は,直接的関与を強めた処遇を実施している(第2編第5章第2節2項(1)・(5)参照)。
 さらに,平成19年11月,犯罪者予防更生法が改正され,保護観察所の長は,保護観察処分少年に対する指導を一層効果的にするための措置として,遵守事項を守らない少年に対し,これを守るよう警告を発することができる手続(これによる警告を受けた少年がなお遵守事項を守らないときは,家庭裁判所の決定により少年院送致等の保護処分を受けることがある。)も導入されている(同法は,20年6月1日,更生保護法に引き継がれた。このほかの施策について,第2編第5章第2節2項(2)・(3)・(6)・(7)参照)。

(4)社会参加活動

 保護観察処遇では,主として少年の保護観察対象者を対象として,福祉施設における介護・奉仕活動,公園清掃等の環境美化活動,陶芸教室・料理教室等の体験学習,農作業,スポーツ活動,レクリエーション活動等に参加させ,対象者の社会性をはぐくみ,社会適応能力を向上させることに努めている。
 平成20年度における社会参加活動は,実施回数372回,実施場所数292か所であり,参加人数は,対象者が1,182人,対象者の家族等が230人であった。実施回数が多かった活動は,「高齢者等に対する介護・奉仕活動への参加」(103回),「清掃・環境美化活動への参加」(86回),「創作・体験活動・各種講習等への参加」(76回)であった(法務省保護局の資料による。)。

(5)保護者に対する措置

 保護観察所においても,少年院と同様に,少年の保護観察対象者の保護者に対する助言等を行ってきたところであるが,平成19年11月,犯罪者予防更生法が改正され,保護観察所の長は,保護者に対し,指導,助言その他の適当な措置を執ることができる旨,法律上明記された(同法は,20年6月1日,更生保護法に引き継がれた。)。
 これを受け,保護観察所においては,少年の保護観察対象者の保護者に対し,少年の生活実態等を把握して適切にその監護に当たるべきことや,少年の改善更生を妨げていると認められる保護者の行状を改めるべきことについて指導又は助言を行うほか,保護者会を開催するなどして,少年の非行に関連する問題の解消に資する情報の提供等を行っている。

(6)一時解除等

 保護観察処分少年のうち,遵守事項を遵守し,生活行動指針に沿った生活及び行動を維持している者に対しては,良好措置としての一時解除の制度があるが,平成20年に一時解除の措置が執られた者は,17人であった。他方,新たなぐ犯事由により家庭裁判所への通告の措置が執られた者は,25人であった(法務省保護局の資料による。)。

(7)就労支援等

 少年の保護観察対象者は,法務省と厚生労働省が連携して実施している総合的就労支援対策の対象者であり,これに基づき,計画的な就労支援が実施されている(第7編第4章第1節3項(1)参照)。
 また,平成19年10月から,農業に就く意思のある少年院仮退院者を宿泊させて,指導監督や農業実習を通じた就労支援を行うことを目的とした沼田町就業支援センターが運営されている(第2編第5章第2節2項(7)第7編第4章第1節3項(3)参照)。