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 平成20年版 犯罪白書 第5編/第1章/第2節/3 

3 犯罪に対する不安・防犯対策の状況・我が国の治安に関する認識

 犯罪被害実態(暗数)調査では,直接の犯罪被害以外に,犯罪に対する不安,防犯対策の状況,現在の我が国の治安に対する認識等多様な項目についても同時に調査している。ここでは,その中から,犯罪に対する不安等についての調査結果の経年比較を行う。
(1)犯罪に対する不安
 犯罪に対する不安は,次に掲げる5-1-2-5図のように,第1回調査(平成12年)のときが最も低く,第2回調査(平成16年)において不安が高まったが,第3回調査(平成20年)においては,やや改善した。刑法犯の認知件数の推移を見ると,平成14年に戦後最高を記録した後,19年まで5年連続で減少している。しかし,犯罪に対する不安に比較的大きな影響を及ぼすと考えられる身近な犯罪である傷害,住居侵入及び器物損壊は,16年以降若干減少傾向にあるものの,全体の傾向とは異なり依然として高い水準の認知件数を維持しており,暴行の認知件数は11年以降増加が続いていることから(第1編第1章1-1-2-2図参照),犯罪に対する不安の改善度も小幅なものに留まったものと考えられる。

5-1-2-5図 犯罪に対する不安の経年比較

ア 夜間の一人歩きに対する不安
 「暗くなった後,あなたの住んでいる地域を一人で歩いているとき,どの程度安全であると感じますか」との問に対して,第2回調査で減少した「とても安全」,「まあまあ安全」とする者の比率が,第3回調査では,やや回復し,「とても危ない」,「やや危ない」とする者の比率が少し低下した(5-1-2-5図[1])。
イ 自宅に夜間一人でいることの不安
 「暗くなってから自宅に一人でいるとき,どの程度安全であると感じますか」との問に対して,第2回調査では「とても安全」とする者の比率が8.7ポイント低下し,その分「やや危ない」とする者の比率が増加したが,第3回調査では,「とても安全」とする者の比率が第2回調査よりも3.5ポイント上昇し,「やや危ない」とする者の比率が2.0ポイント低下した(5-1-2-5図[2])。
ウ 自宅において不法侵入の被害に遭う不安
 「今後1年間のうちに,誰かがあなたの自宅に侵入しようとすることについて考えてみてください」との問に対して,第3回調査においては,第2回調査よりも「あり得ない」とする者の比率が6.2ポイント上昇し,その分「あり得る」及び「非常にあり得る」とする者の比率が低下した(5-1-2-5図[3])。
(2)防犯対策の状況
 防犯対策の状況について,第1回から第3回までの調査において顕著に認められる傾向としては,[1]侵入防止警報機,[2]特別のドア鍵,[3]特別の窓/ドア格子といった住居の防犯設備の設置率の増加及び「何の防犯設備もない」とする者の比率の低下である(5-1-2-6図)。

5-1-2-6図 防犯対策の経年比較

(3)我が国の治安に関する認識
 以上をまとめた我が国の治安に関する全般的認識を見ると,第2回調査に比べて第3回調査では,「良い」とする者の比率が5.2ポイント上昇し,その分「悪い」とする者の比率が低下した(5-1-2-7図)。しかし,「悪い」とする者の比率は,第3回調査でも依然として過半数を超えており,国民の治安に関する認識はなお厳しいことが分かる。

5-1-2-7図 現在の我が国の治安に関する認識の経年比較