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 平成20年版 犯罪白書 第5編/第1章/第2節/2 

2 第3回調査の結果

 回答が得られた者は3,717人,回答率は62.0%であった。なお,回答者の内訳は,男子1,756人(47.2%),女子1,961人(52.8%)となっている。
(1)犯罪被害の種類
 国際犯罪被害実態調査(ICVS)では,犯罪被害の実態を世帯犯罪被害と個人犯罪被害に分けて調査している。これらの犯罪被害は,国際比較を可能とするため,当該被害の実態に共通の要素を基準とした国際標準の定義に基づいて調査しており,特定の国の法律上の犯罪類型とは必ずしも合致しない場合を含んでいる(詳細は,5-1-2-1図の注に掲げた,犯罪被害態様別の定義を参照されたい。)。世帯犯罪被害とは,世帯単位での犯罪被害の有無の調査であり,例えば「あなたは,又はあなたの世帯では,自転車を盗まれたことがありましたか」という問いで被害を調査する。調査対象となる犯罪被害は,自動車盗,車上盗,自動車損壊,バイク盗,自転車盗,不法侵入及び不法侵入未遂である。また,個人犯罪被害とは,個人単位での犯罪被害の有無を調査するもので,例えば「あなたは,暴行・脅迫の被害に遭ったことがありましたか」という問いで被害を調査する。調査対象となる犯罪被害は,強盗,個人に対する窃盗(世帯犯罪被害としての車両関連の窃盗被害を除外する趣旨),暴行・脅迫及び性的事件である。
(2)犯罪被害の実態
ア 被害態様別犯罪被害率
 調査対象とした犯罪被害について,過去5年間(調査実施時点以前の5年間をいう。以下,本節において同じ。)及び平成19年中に,それぞれ1回以上犯罪被害に遭った比率(以下,本節において「被害率」という。)を被害態様別に見ると(5-1-2-1図),世帯犯罪被害の中では,自転車盗の被害率が最も高く,自動車損壊,バイク盗がこれに続いている。他方,個人犯罪の被害率は,全般的に世帯犯罪被害のそれよりも低い。

5-1-2-1図 第3回調査 被害態様別過去5年間・平成19年の被害率

 また,すべての種類の犯罪被害(全犯罪被害)のうち,いずれかの被害に遭った者の比率は,過去5年間では全回答者の32.3%であり,調査前年の平成19年1年間では9.4%であった。この点に関して,第1回調査から今回までの経年比較を見ると(5-1-2-2図),過去5年間及び調査前年の被害率ともに,低下傾向にあることが分かる。

5-1-2-2図 過去5年間・調査前年の全犯罪被害の被害率

イ 被害態様別被害申告率
 調査対象とした犯罪被害について,過去5年間にこれらの被害に遭った世帯及び個人につき,直近の被害を捜査機関に届けた比率(以下,本節において「被害申告率」という。)を被害態様別に見たのが5-1-2-3図である。
 世帯犯罪被害では,自動車盗,バイク盗,車上盗及び不法侵入の順に被害申告率は60%を超えている。他方,自動車損壊や不法侵入未遂の被害申告率は低く,被害態様による差が大きい。自動車損壊及び不法侵入未遂の被害を申告しなかった理由は,双方の被害態様とも「それほど重大ではない/損失がない/たいしたことではない」が最も多く,それぞれ61.6%,68.7%であった。
 個人犯罪被害では,強盗の被害申告率が比較的高く,その理由は,「犯人を捕まえてほしいから/処罰してほしいから」が最も多かった(57.1%)。被害申告率が最も低い性的事件の被害を申告しなかった理由は,「それほど重大ではない/損失がない/たいしたことではない」が最多であった(43.9%)。

5-1-2-3図 第3回調査 被害態様別の被害申告率

(3)被害態様別犯罪被害の経年比較
 全犯罪被害の経年比較は,5-1-2-2図のとおりであるが,ここでは,更に過去5年間の被害態様別被害率・申告率について,第1回から第3回までの経年比較を行う(5-1-2-4表)。
 世帯犯罪被害の被害率では,低下傾向にあるのが,自動車損壊,バイク盗,自転車盗である。自動車盗,車上盗,不法侵入及び不法侵入未遂については,大きな変動は見られない。被害申告率では,自動車盗は増減を経ながら上昇し,車上盗に関しては一貫して上昇したこと,不法侵入未遂に関して増減があること以外,大きな変動は見られない。
 個人犯罪被害の被害率では,低下傾向にあるのが,個人に対する窃盗及び性的事件である。強盗及び暴行・脅迫では,若干の増減が見られる(なお,第2回調査で,強盗の被害率が低下したのは,この部分に関して調査票の内容が国際標準と異なり,「恐喝」,「ひったくり」の類型を除外したためで,国際標準の調査票に戻した第3回と第1回の結果を比較すると,大きな変動は見られない。)。被害申告率では,強盗は,第1回及び第2回と比べて,第3回ではかなり上昇した。個人に対する窃盗は,3回の調査を通じて大きな変動は見られない。暴行・脅迫に関しては,第2回が第1回と比べてかなり上昇したものの,第3回では低下した。性的事件については,第2回が第1回と比べて上昇したものの,第3回ではやや低下した。

5-1-2-4表 被害態様別被害率・被害申告率(過去5年間)の経年比較