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 平成16年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節 

第2章 検察

第1節 概説

 検察庁は,検察官の行う事務を統括するところであり,最高裁判所に対応する最高検察庁,高等裁判所に対応する高等検察庁,地方裁判所及び家庭裁判所に対応する地方検察庁,簡易裁判所に対応する区検察庁の4種類がある。
 検察官は,検察庁法(昭和22年法律第61号)により,公益の代表者として,[1]犯罪について捜査をする権限,[2]刑事について公訴を行う権限,[3]刑事について裁判所に法の正当な適用を請求する権限,[4]刑事について裁判の執行を監督する権限,[5]裁判所の権限に属するその他の事項について職務上必要と認めるときは,裁判所に,通知を求め,又は意見を述べる権限,[6]他の法令がその権限に属させた事務を行う権限を有する。
 我が国は,国家訴追主義を採用しており,私人による訴追は認められず,いわゆる準起訴手続第3編第2章第1節1参照)を唯一の例外とするほかは,公訴権は検察官にのみ与えられている(起訴独占主義)。
 検察官は,警察等から事件の送致・送付若しくは告訴・告発等を受け,又は自ら事件を認知して捜査を行い,その結果等に基づき事件を処理する。事件処理には,終局処分と中間処分とがあり,終局処分は,起訴処分と不起訴処分とに大別される。
 起訴処分には,公判請求のほか,略式命令請求及び即決裁判請求がある。不起訴処分には,[1]訴訟条件を欠くことを理由とするもの(被疑者死亡,法人等消滅,親告罪の告訴・告発・請求の欠如・無効・取消し等),[2]事件が罪にならないことを理由とするもの(刑事未成年,心神喪失等),[3]犯罪の嫌疑が認められないことを理由とするもの(嫌疑なし,嫌疑不十分)のほか,[4]犯罪の嫌疑が十分ある場合でも,犯人の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときに行う起訴猶予処分がある(起訴便宜主義)。
 なお,検察官は,少年の被疑事件について捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料するときは,家庭裁判所から送致を受けた事件である場合を除いて,これを家庭裁判所に送致しなければならないとされている。また,犯罪の嫌疑がない場合でも,虞犯であると思料するときは,同様に家庭裁判所に送致しなければならないとされている(少年検察については,第4編第2章第2節1参照。)。