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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第5章/第5節/2 

2 少年院在院者の特性

 III-80表は,最近3年間における少年院新収容人員を,短期処遇の二つの区分及び長期処遇の五つの処遇課程(以下「処遇課程等」という。)に分け,男女別に見たものである。少年院新収容人員は,昭和60年以降漸減傾向にあり,平成元年には,総数で前年より20人(0.4%)減少して4,811人となっている。これを更に処遇課程等別に見ると,短期処遇は,一般短期処遇及び交通短期処遇のいずれも前年より増加して,総数で1,799人(前年比181人・11.2%増)となっている。一方,長期処遇は,職業訓練課程を除くすべての処遇課程で前年より減少し,総数で3,012人(同201人・6.3%減)となっている。処遇課程等のうちでは,生活指導課程の収容人員が最も多く,総数の44.7%を占め,次いで,一般短期処遇が31.8%となっている。次に,総数を男女別に見ると,男子は4,253人(同1人・0.02%減),女子は558人(同19人・3.3%減)である。

III-80表 少年院新収容者の処遇課程等別人員(昭和62年〜平成元年)

 なお,平成元年における少年院の1日平均収容人員は3,748人(男子3,299人,女子449人),同じく出院人員は4,915人(男子4,334人,女子581人)である。
 III-81表は,少年院新収容者の年齢別人員を,短期処遇の二つの区分及び長期処遇(以下「処遇区分」という。)に分け,男女別に見たものである。総数の構成比では,18歳・19歳の年長少年体節において,20歳以上の者を含む。)が全体の47.1%を占め,次いで,16歳・17歳の中間少年が38.3%,14歳・15歳の年少少年が14.6%となっている。これを男女別で見ると,男子は,年長少年で49.6%,中間少年で37.5%,年少少年で12.8%となっているが,女子ではそれぞれ27.8%,44.3%,28.0%を占めており,男子では年長少年が,女子では中間少年がそれぞれ半数近くを占めるなどの特徴が見られる。次に,短期処遇と長期処遇とを比較すると,短期処遇では,年長少年が43.5%,中間少年が42.1%,年少少年が14.4%であるが,長期処遇では,それぞれ49.2%,36.1%,14.7%となっており,長期処遇の方が,年長少年の占める割合がやや高くなっている。

III-81表 少年院新収容者の処遇区分・年齢別人員(昭和62年〜平成元年)

III-82表 少年院新収容者の処遇区分・非行名別人員(昭和62年〜平成元年)

 III-82表は,少年院新収容者の非行名別人員を,男女・処遇区分別に見たものである。平成元年の総数の構成比では,刑法犯が71.8%(前年比1.7ポイント減),特別法犯が20.7%(同1.7ポイント増),虞犯が7.5%(同増減なし)となっている。非行名のうち最も高い割合を占めるのは,窃盗の41.1%であるが,前年に比べ3.2ポイント減少している。次に,男女別に構成比が高いものを挙げると,男子では,窃盗(44.3%),傷害(10.4%),道路交通法違反(9.2%)など,女子では,虞犯(32.4%),覚せい剤取締法違反(20.1%),窃盗(16.7%),毒物及び劇物取締法違反(9.5%)などである。さらに,処遇区分別に比較すると,一般短期処遇,長期処遇共に窃盗の割合が最も高く,それぞれ41.0%,44.4%であり,続いて,一般短期処遇では傷害(13.9%),毒物及び劇物取締法違反(8.2%)などの順,長期処遇では傷害(9.2%),虞犯(8.3%)などの順となっている。交通短期処遇では,当然のことながら道路交通法違反及び業過の割合が高く,それぞれ69.1%,17.5%となっている。

III-54図 少年院新収容者の処遇区分・不良集団加入歴別構成比(平成元年)

 III-54図は,少年院新収容者の不良集団への加入歴の構成比を,男女に分け処遇区分別に示したものである。各処遇区分共に何らかの不良集団に加入していた者が過半数を占めるが,長期処遇では,男女共に暴力組織への加入歴のある者の割合が比較的高く(男子13.0%,女子13.9%),交通短期処遇では,暴走族への加入歴のある者の割合が極めて高い(64.9%)などの特徴が見られる。
 III-83表は,少年院新収容者の教育程度の構成比を,男女に分け処遇区分別に見たものである。各処遇区分共に中学卒業の者の割合が最も高く(約5割から約7割),次いで,男子では高校中退の者(約2割から約4割),女子では中学在学の者(2割強)がそれぞれ高くなっている。また,男子の処遇区分別では,交通短期処遇,一般短期処遇,長期処遇の順で教育程度が高い状況がうかがわれる。女子では,男子に比べ中学在学の者の割合の高いことが目立っている。

III-83表 少年院新収容者の処遇区分・教育程度別構成比(平成元年)

 III-84表は,少年院収容者の入院前の保護処分歴別構成比を,男女に分け処遇区分別に見たものである(重複計上)。女子の一般短期処遇を除けば,保護処分歴のない者は,他の処遇区分で4割に達せず,何らかの保護処分を受けたことのある者が多いことがわかる。男子では,保護観察歴のある者が高率で,いずれも6割前後を占めている。また,男子の長期処遇では,教護院・養護施設歴のある者が17.6%,少年院歴のある者が33.4%であり,女子の長期処遇では,教護院・養護施設歴のある者が16.3%,少年院歴のある者が21.8%で比較的高くなっている。しかし,男女共に一般短期処遇,交通短期処遇では,教護院・養護施設歴及び少年院歴のある者の割合は低率である。

III-84表 少年院収容者の処遇区分・保護処分歴別構成比(平成元年)

III-85表 少年院在院者の主な特性についての男女・年齢層別構成比(平成2年3月318現在)

 III-85表は,法務省矯正局の調査によって明らかにされた,平成2年3月31日現在の全国少年院在院者3,540人の主な特性について,男女別,年齢層別に見たものである。初発非行時年齢について見ると,12歳未満である者の比率は,男子の年少少年で32.8%,女子の年少少年で23.6%であり,また,中間少年及び年長少年の場合も男子は女子よりもこの比率が高く,男子は女子に比べて非行の始まりが早いことがわかる。問題行動歴について見ると,全体では,家出,怠学・登校拒否,有機溶剤濫用及び万引きの割合が高い。男女を比較して,いずれの年齢層においても男子の割合が女子のそれよりも高いものは,家庭内暴力,対教師暴力及び生徒間暴力であり,逆に,女子の割合が男子のそれよりも高いものは,家出,怠学・登校拒否,有機溶剤濫用及び覚せい剤濫用である。家庭環境上の問題(重複計上)では,男女共に父母間の不和・葛藤,父母離婚・別居がそれぞれ5割前後を占めているなど,少年院在院者には家庭上の問題を抱えている者の多いことがうかがえる。