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 平成 2年版 犯罪白書 第3編/第3章/第1節/1 

第3章 非行少年の実態

第1節 少年鑑別所収容少年の実態

1 概  説

 本章では,主として少年鑑別所収容少年の統計資料に基づいて,非行少年の実態を述べるが,第1節では,少年鑑別所に初めて入所した少年について,また,第2節では少年鑑別所に2回以上入所した少年を中心に非行を繰り返す少年について,それぞれの実態を分析する。
 はじめに,非行少年全体の中で,少年鑑別所収容少年がどのような位置付けになるかを見てみよう。III-29表は,昭和63年中における,家庭裁判所の少年保護事件新規受理人員並びに少年鑑別所及び少年院の新収容者について,非行名別の人員並びに非行名別の家庭裁判所新規受理人員に対する少年鑑別所及び少年院新収容者の比率を見たものである。まず,総数について見ると,少年鑑別所新収容者の比率は3.6%であり,これを業過及び道路交通法違反の交通事犯を除いた人員について見ても7.5%にすぎず,前記受理人員の中に占める割合は低いものである。しかし,非行名別に見ると,86.7%が少年鑑別所の新収容者である殺人を始めとして,傷害致死(73.2%),強姦(68.9%),覚せい剤取締法違反(66.6%),虞犯(63.1%),公務執行妨害(62.7%)などについて比率が高く,これらの非行により家庭裁判所に係属した少年の大半が少年鑑別所に収容されていることがわかる。これに対して,窃盗(5.0%),賍物(1.3%),道路交通法違反(0.7%),業過(0.5%),横領(0.2%)などの比率は低く,これらの非行については,大部分の少年が少年鑑別所に送致されないまま,処理されていることがうかがえる。このように,家庭裁判所から少年鑑別所に送致される少年の割合は,非行の種類によって大きく異なるものとなっている。

III-29表 家庭裁判所新規受理人員及び少年鑑別所・少年院新収容者の非行名別人員         (昭和63年)

 なお,参考までに,家庭裁判所新規受理人員中に占める少年院新収容者の比率を見ると,総数では0.9%(交通事犯を除く総数では1.9%)であり,非行名別では,51.8%が新収容者である傷害致死が最も高く,以下,殺人(36.7%),強姦(35.1%),放火(31.1%),覚せい剤取締法違反(23.8%)強盗(21.5%)の順であり,さらに,虞犯(9.7%),強制猥褒等(8.1%),売春防止法違反(7.8%)が続いているが,これらの非行名以外については,いずれも5%以下の低い比率である。