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 昭和37年版 犯罪白書 第一編/第五章/三/1 

1 全般的傾向

 昭和三一年から昭和三五年の五年間に新受刑者のなかで再入受刑者の占める平均比率は,五七・七%である(I-86表参照)。これらの再入受刑者が前刑の出所後どのくらいの期間がたった後に再入の理由となったような犯罪をくり返して行なったかについて,右の五カ年の平均をとってみると,再入受刑者の二四・一%が三月未満,三五・六%が三月から一年未満,二五・七%が一年以上三年未満となっている。すなわち,再入受刑者は,前刑出所後一年未満に約六〇%が再犯を犯しており,この期間を三年未満とすれば八五・三%となり,さらに五年未満とすれば九三・一%が再犯を犯していることになる(I-87表)。したがって,出所後一年以内が再犯の最も危険な時期であり,また,出所後五年を経過すれば,再犯の危険性はきわめてうすらぐということがこの統計からわかる。

I-87表 再入受刑者の再犯期間別人員の率(昭和31〜35年)

 再入受刑者の再犯と再犯期間との関係をグラフで描くとすれば,逆J型の曲線をえがくことになるが,右の五年間の傾向を各年別に比較してみると,毎年わずかずではあるが,三カ月未満に再犯を犯すものの割合が増加してきている。したがって全般的にみると,再犯期間が短かくなってきつつあり,逆J型曲線の傾斜が急になってきているといえる。
 なお,男女別に比較してみると,わずかに女子の方が男子より再犯速度がおそいといえる。すなわち,二年以上経過した後に再犯を犯す者の比率は,男子よりわずかに女子の方が高い。
 以上は,ある年度に刑務所に新入した受刑者(新受刑者)のなかの再入受刑者について,前刑の出所後犯罪までの期間を回顧的にみたものであるが,昭和二六年から昭和三〇年までの五年間に刑務所を出所した者について,その成行を調査し,再犯を犯した場合にはどの程度の期間が経過した後に再入したかを出所後五年間について追跡調査してみると,I-88表のとおり,出所人員総数二七五,二一八人のうち再入したものはその四八・三%にあたる一三二,八六六人である。この再入した者につき再入期間(出所から再び入所するまでの期間)をみると,出所したその年に再入した者は,再入者の一八%,その翌年に再入した者は四一%であるから,その合計である五九%は,出所の翌年までに再入したことになる。この統計は,出所後五年以上経過したものを調査の対象から外しているが,最近の五年間の刑務所からの出所者の平均をみると,その四八%までが再入し,その再入期間は約六割弱までが出所の翌年までであるということは,さきに述べた再犯期間,すなわち,再犯を犯すまでの期周の一年以内のものがその過半数を占めるという傾向と表裏をなすものといえよう。

I-88表 出所後5年以内の再入人員と率(昭和26〜30年累計)