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 昭和63年版 犯罪白書 第4編/第5章/第3節/1 

第3節 多数回受刑歴を有する者の更生緊急保護

1 概  説

 更生緊急保護については,先に第2編第4章第3節において述べたとおり,その保護の内容は,保護観察所が自ら行う自庁保護(一時保護)と更生保護会に委託して行う委託保護(継続保護)とに大別される。
 法務総合研究所では,多数回受刑歴を有する者に対する更生緊急保護の実態を明らかにするために,全国の保護観察所に依頼して,特別調査(以下「更生保護調査」という。)を行った。この調査は,昭和61年1月1日から同年12月31日までの1年間に,全国の保護観察所において更生緊急保護法の規定により保護した者のうち,多数回受刑歴を有する者を対象に実施され,公的資料に基づいて保護観察官が調査票に記入したものである。

IV-70表 自庁保護実施状況

 IV-70表は,昭和61年に,全国の保護観察所において行った自庁保護の措置の概況及び保護をしなかった人員を,全員と多数回受刑歴を有する者について見たものである。措置別人員中に占める多数回受刑歴を有する者の各比率は,保護した人員の総数に占めるその比率(25.7%)に比べて,医療援助では52.2%,食事給与で37.0%,旅費支給で36.5%と高く,逆に,作業服,地下足袋などの衣料給与では19.2%とその比率が低くなっている。また,本人から保護の申出はあったが,自助の意欲が認められないなどの理由で,保護観察所長が保護措置を採らない決定をした人員においても,多数回受刑歴を有する者の比率(45.1%)は高い。