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 昭和60年版 犯罪白書 第4編/第2章 

第2章 各処遇対象者の処遇別再犯状況

 本章では,前述のとおり,各段階の処遇対象者が,どのような再犯状況を示しているかを,各段階ごとに検証するが,ここに用いた資料は次のとおりである。
 起訴猶予者については,全国50の地方検察庁本庁及び同併置の区検察庁において,昭和55年9月16日から同月30日までの間に受理した事件(業過,道交違反を除く。)のうち,起訴を猶予された被疑者1,575人について,同受理後3年以内の新たな犯罪(業過,地方公共団体条例違反及び道交違反を除く。)により有罪の裁判が確定したものを再犯として,法務総合研究所で調査したものである。なお,ここで取り上げた起訴猶予者は,余罪について起訴されたり,既に別事件で受刑中あるいは裁判中であった者を除外した実質的な起訴猶予者に限った。また,集計に当たり,55年の処分罪名と再犯の刑名及び罪名については,後述の法務省保管の電算化犯歴からの50万人抽出の手法に従った。
 罰金・拘留・科料の処分を受けた者,懲役・禁錮の執行猶予者,仮釈放者及び満期釈放者については,法務総合研究所が,法務大臣官房秘書課電子計算機室の協力を得て,法務省において集中管理している,いわゆる電算化犯歴を活用して分析したものである。法務省の電子計算機には,昭和23年1月1日以降に裁判が確定した日本国籍を有する者の犯歴が収録されている。今回の調査では,そのうち,58年末までに確定した犯歴で,業過及び地方公共団体条例違反の犯歴並びに道交違反による罰金以下の犯歴を除外して無作為に抽出した50万人分の犯歴を用いている。なお,この抽出に当たり,併科刑又は複数刑の同時言渡しの場合は,そのうち最も重い1個の刑を,併合罪又は科刑上一罪については,あらかじめ定めた優先順位に従って1個の罪名を,それぞれ選択し,1犯歴・1刑名・1罪名となるように処理した。調査は,前記50万人のうち,55年中に罰金・拘留・科料の裁判が確定した者(1万4,134人),懲役・禁錮の執行猶予の裁判が確定した者(単純執行猶予者3,348人,保護観察付執行猶予者834人)及び同年中に仮釈放又は満期釈放となった者(仮釈放者1,324人,満期釈放者2,154人)について,裁判確定後又は釈放後3年以内の有罪裁判確定を再犯(複数の再犯がある場合は最初のものを取り上げた。)として分析したものである。
 第3節の「少年保護」のうち,保護観察については保護統計年報によっているが,少年院については,昭和55年中に全国の少年院を退院又は仮退院してその後の再犯の有無を把握できた4,000人について,出院後3年以内の少年院再入院又は罰金・懲役・禁錮の有罪裁判確定を再犯として,法務総合研究所が全国の少年院の協力を得るなどして調査したものである。
 なお,再犯傾向を明らかにするため昭和55年の処分罪名と再犯罪名の関係を見ている賍物が,各犯罪を凶悪犯(殺人,強盗),粗暴犯(傷害,暴行,脅迫,恐喝,凶器準備集合),財産犯(窃盗,詐欺,横領,背任,賍物),性犯罪(強姦,強制猥褻,公然猥褻,猥褻文書頒布等),薬物犯罪(麻薬取締法,あへん法,大麻取締法,覚せい剤取締法,毒物及び劇物取締法の各違反),風俗犯罪(売春防止法,競馬法,自転車競技法の各違反)及びその他に分類し,同一分類に属するものを同種罪名,異なった分類に属するものを異種罪名と呼んでいる。