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 昭和56年版 犯罪白書 第4編/第3章/第5節/2 

2 少年司法制度

 フランスの少年司法制度は,少年法(犯罪少年に関する1945年2月2日オルドナンス)等によって定められている。刑事責任年齢は13歳であり,13歳以上18歳未満を少年,18歳以上を成人とする。少年による犯罪は,少年係判事(juge des enfants),少年裁判所(tribunal pour enfants)及び少年重罪法院(cour dassises des mineurs)という3種類の少年裁判所によって,犯罪類型(違警罪第5類,軽罪,重罪)及び犯時年齢の区分(16歳)に従って管轄が定められる。なお,少年による通常の違警罪は,成人と同じく,違警罪裁判所の管轄である。
 少年裁判所と少年重罪法院(16歳以上の少年の重罪事件を管轄する。)は,それぞれ地方裁判所と重罪法院に対応する少年裁判所であるが,フランスの少年司法で特色があるのは少年係判事である。少年係判事は,各少年裁判所に置かれ,軽罪事件について予備取調べにより,少年の人格・環境に関する社会的調査及び資質鑑別を行い(鑑別所収容などの仮監護の措置をとることができる。),予審判事的機能を行うとともに,裁判所として事件を審判する。ただし,命じ得る処分は,軽い教育処分(訓戒,親権者等への委託など)だけである。少年係判事はまた,少年裁判所において,裁判長として,他の2人の参審員とともに裁判を行う。
 少年の刑事訴追及び裁判については,成人の場合と基本的に同じであり,警察等から送致を受けた少年事件について,検察官が起訴・不起訴を決定する。フランスでは,起訴便宜主義(刑事訴訟法第40条第1項)により,少年を不起訴処分に付することができる。同国では予審制度が維持されているので,不起訴処分にされなかった少年事件は,少年係判事又は予審判事に送致され,予備取調べ又は予審を経て,前記の各少年裁判所で裁判を受ける。
 少年裁判所及び少年重罪法院における審理は対審構造をとり,有罪が認定された少年に対しては,教育処分(保護処分,mesure de reeducation)又は刑事処分が科される。しかし,少年係判事の審判は,自由な手続方式により,裁判官室等で行われる。
 教育処分は,訓戒,親権者等への委託,教育・職業訓練施設への収容,医療施設等への収容,少年院への収容など多様な種類があり,刑事処分は,拘禁刑(定期刑のみ)と罰金である。この両処分については,教育処分の優先性の原則があり,刑事処分は「犯罪の情状及び犯人の人格に照らして必要と認めるとき」にのみ科すことができる(少年法第2条)。
 このような刑事手続のほかに,「要保護少年」(mineurs en danger,21歳未満の虞犯又は放任少年)に対する児童福祉法的な性格の保護手続があり,少年係判事の管轄とされている。
 以上のように,フランスの少年司法は,教育(保護)主義の理念,検察官先議,刑事手続における対審構造,少年係判事の制度,少年処遇における手続の一元化,教育処分の多様性などが特色になっている。