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 昭和55年版 犯罪白書 第4編/第3章/第2節/3 

3 保護観察

(1) 新規受理者の特徴
ア 性別及び年齢層
 少年院から仮退院を許された者は保護観察に付されるが,少年院仮退院者の保護観察における新規受理人員について性別構成を見てみると,昭和35年以降,男子が88.1%ないし92.6%であって,その大部分を占めている。女子の占める比率は低いが,51年以降は微増し続けており,54年では,35年以降最高の11.9%となっている。
 次に,年齢層別構成を昭和35年以降について見ると,IV-18図のとおりである。18歳以上20歳未満の年長少年が占める比率が常に最も高く,16歳以上18歳未満の中間少年がこれに次ぎ,これより比率が大きく下がって,14歳以上16歳未満の年少少年又は20歳以上の若年成人がこれに次いでいる。35年では,年長少年が53.8%,中間少年が31.2%,若年成人が9.1%,年少少年が5.9%であるが,39年では,中間少年の比率が増加し,年長少年45.4%,中間少年38.2%,年少少年10.1%,若年成人6.3%となり,43年では,年長少年の比率が最も高くなって66.9%を占め,中間少年24.8%,若年成人5.3%,年少少年3.1%の順となっている。その後,年長少年はおおむね減少を続けるが,中間少年は46年以降増加を続け,また,若年成人,年少少年も微増を見せており,54年では,年長少年49.9%,中間少年30.8%,若年成人12.5%,年少少年6.8%となっている。

IV-18図 少年院仮退院者新規受理時年齢層別構成比の推移(昭和35年〜54年)

イ 非行名
 昭和30年から50年までの5年ごと及び51年から54年までについて主要非行名別構成を見ると,IV-63表のとおりである。窃盗が第1位を続けているが,その比率はおおむね漸減の傾向を示し,54年には49.0%となっている。第2位については,虞犯から恐喝へ,恐喝から強姦へ,そして再び虞犯へと変化している。すなわち,30年代前半では虞犯が10%台ないし11%台で第2位を占めるが,30年代後半では恐喝が9%台ないし11%台に増加して虞犯にとって代わり,次いで,42年以降50年までは強姦が9%台ないし12%台に上昇して第2位を占め続けるが,51年からは再び虞犯が第2位を占めるに至っている。また,52年以降は覚せい剤取締法違反が増加し,54年では4.7%となっているのが注目される。
(2) 処遇の推移
ア 応急の救護
 少年院仮退院者に対しても,一時保護及び継続保護の応急の救護の保護措置がとられている。昭和41年以降におけるこれらの保護措置がとられた人員を見ると,おおむね減少しており,41年では,一時保護607人,継続保護742人であるが,54年では,一時保護109人,継続保護318人となっている。保護観察が実施された少年院仮退院者中に占める比率では,一時保護は減少して,41年には3.7%であったが,54年は1.6%になっており,一方,継続保護は横ばいで,41年が4.5%,54年は4.6%である。この比率の低さは,少年院仮退院者の大部分が,肉親などの保護者の下に帰住していることによるものと思われる。

1V-63表 少年院仮退院者新規受理人員の主要非行名別構成比

イ 所在不明
 少年院仮退院者のうち,所在が明らかでない者について,昭和35年以降の各年末現在における人員及びその者の占める比率を見ると,人員では,36年,37年が1,101人,1,089人,41年,42年が1,027人,1,003人であるほかは1,000人未満であり,43年から減少を続け50年には160人となるが,その後増加に転じ,54年は278人となっている。比率では,45年までは,9.2%ないし12.4%であるが,46年以降はおおむね減少し,特に,50年からは7%台であって,54年では7.1%となっている。
ウ 退院,戻し収容,保護処分取消し
 少年院仮退院者は,保護観察の結果,行状が良好で安定した場合にあっては,保護観察期間満了前に保護観察を終了する退院の措置がとられ,また,保護観察の実施にもかかわらず,遵守事項違反,再非行等があや場合には,少年院に再収容する戻し収容の措置又は保護処分の取消しの措置がとられるが,保護観察における処遇の一端を示すこれらの措置の実施人員を,昭和30年から50年までの5年ごと及び51年から54年までについて見ると,IV-64表のとおりである。少年院仮退院者の保護観察終了者中,退院により保護観察が終了した者の比率は,30年から49年までは1%台ないし3%台であるが,51年に5.3%,52年には10.2%と上昇し,54年では16.3%に増加している。一方,戻し収容は,ほとんど1%以内であるが,保護処分取消しは,30年から36年までは10%台であるが,37年から42年までは20%台に上昇し,特に,41年では27.4%にまで達するが,その後減少して49年には12.3%になるものの,翌50年から再び増加に転じ,54年では19.2%となっている。51年以降,退院という良好な措置がとられる者が増加しているものの,戻し収容,保護処分取消しという不良な措置がとられる者も増加している。

IV-64表 少年院仮退院者の保護観察終了者中,退院・戻し収容・保護処分取消の占める率(昭和30年,35年,40年,45年,50年〜54年)

エ 終了時の成績
 少年院仮退院者に対する保護観察の実施結果を,前述の良好,不良の措置がとられて保護観察が終了した者に,保護観察期間が満了して終了した者を加えて保護観察終了時における成績で見てみると,昭和30年から50年までの5年ごと及び51年から54年までについては,IV-65表のとおりである。良好な成績で終了した者の占める比率は,30年から32年までは20%台であるが,その後,30年代半ばにかけては10%台に減少したものの,37年から増加に転じ,51年からは40%台となっているが,54年は下降して38.8%である。これに対し不良な成績で終了した者の比率は,30年から41年にかけて上昇し,41年には49.3%に達するが,その後は下降して44年以降は30%台にあり,54年は34.7%である。48年以降は,良好な成績で終了する者が,不良な成績で終了する者を上回っている。

IV-65表 少年院仮退院者の保護観察終了時における成績別構成比