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 昭和55年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/3 

3 公害犯罪

 最近3年間における公害犯罪の検察庁新規受理人員を見ると,I-30表のとおりである。受理人員総数は,昭和52年以降減少していたが,54年には再び増加し,前年より306人増の6,605人となっている。54年について罪名別受理人員を見ると,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反が4,358人と全体の66.0%を占め,次いで,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反が1,226人(18.6%),水質汚濁防止法違反が528人(8.0%)と続いており,この三者で全体の92.6%を占めている。廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反は一貫して増加を続けており,54年には前年より286人増加している。海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反は53年には前年より減少したが,54年には79人増加している。水質汚濁防止法違反は53年まで増加を続けていたが,54年には前年より61人減少した。

1-30表 公害犯罪罪名別検察庁新規受理人員

 警察庁の資料により,最近3年間について,産業廃棄物の不法投棄事犯に係る廃棄物排出量を業種別に見ると,I-31表のとおりである。昭和54年において,最も多量に廃棄物を排出した業種は建設業で,全体の88.3%を占めている。次いで,前年までの鉄鋼業に代わって窯業・土石製造業が続いている。不法投棄された産業廃棄物の総量は約45万3,000トンにのぼり,これを種類別に見ると,建設廃材が約29万7,000トン,汚でいが約12万トンで,この両者で全体の92.1%を占めている。

I-31表 不法投棄産業廃棄物業種別排出量

 I-32表は,海上保安庁の資料により,昭和50年以降54年までの5年間における海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反の検察庁への送致状況を違反態様別に示したものである。総数で見ると,51年の1,404件から減少傾向を示し,54年には1,094件となっている。54年について違反態様別に見ると,船舶からの油排出違反が477件(43.6%)と最も多く,廃船の規制違反が333件(30.4%),油記録簿備付・記載・保存義務違反が132件(12.1%),船舶からの廃棄物排出違反が83件(7.6%)と続いている。直接海洋汚染に結びつく海上公害事犯(いわゆる実質犯)について見ると,50年以降実数では増減の起伏を示し,54年には901件となっているが,これを総数に対する比率で見ると,50年の56.7%から上昇傾向を示し,54年には82.4%に達している。

I-32表 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反の態様別送致件数

 I-33表は,最近3年間における公害犯罪の検察庁処理人員を罪名別に示したものである。昭和54年の起訴人員総数は,前年より179人増の4,410人で,そのうち公判請求人員は前年より6人増の84人である。起訴率は71.4%,公判請求率は1.9%で,いずれも前年を上回っている。罪名別起訴人員を見ると,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反が前年より249人増の2,955人で最も多く,そのうち公判請求人員が63人となっている。

I-33表 公害犯罪罪名別検察庁処理人員

 最近5年間における廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反並びに水質汚濁防止法違反の処理人員を法人・個人別に示すと,I-34表のとおりである。昭和54年について見ると,法人は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反では481人(11.2%),海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反では198人(17.8%),水質汚濁防止法違反では193人(33.5%)となっており,水質汚濁防止法違反において法人の占める比率が高くなっている。廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反で法人の占める比率が低いのは,同違反の中に産業廃棄物以外の一般廃棄物の不法投棄事犯が多数あるためであろう。

I-34表 公害犯罪の法人・個人別処理人員