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 昭和55年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節/2 

2 選挙犯罪

 前出I-18表のとおり,昭和54年における公職選挙法違反の検察庁新規受理人員は5万812人で,前年の3,776人から大幅に増加している。これは,53年には地方選挙,参議院議員補欠選挙等の地域的な選挙が行われただけであったのに対し,54年には統一地方選挙(4月8日及び同月22日施行),衆議院議員総選挙(10月7日施行)等の全国的規模の選挙が行われたためである。54年における選挙犯罪の特徴的事象としては,違反事件の多くが事前運動を伴うものであること,後援会,企業等各種組織の合法活動を仮装した事犯が多発したこと,圧倒的多数が買収事犯で,しかも高額化,大規模化していることなどが挙げられよう。
 I-24表は,最近行われた3回の統一地方選挙について,公職選挙法違反の検察庁受理人員(検察庁間の移送,再起を含む。)を違反態様別に見たものである。受理人員総数は,毎回減少を続け,昭和54年には,前回より9,254人減の3万8,021人となっている。違反態様別に見ると,いずれも買収事犯がその大半を占めていることに変わりはないが,54年においては,買収の占める比率が前回より3.9%上回って93.3%に達していることが注目される。54年における文書違反,選挙妨害の各比率は,前2回に比べやや下回っているが大差はなく,不正投票事犯は前2回よりかなり下回っている。特異な事例としては,県議会議員選挙における高額買収事犯,投票所入場券の集票グループと入手した入場券により投票するグループに分かれた不正投票事犯等が挙げられよう。

I-24表 統一地方選挙関係公職選挙法違反の検察庁受理人員

I-25表 昭和54年4月施行の統一地方選挙の際の選挙違反態様別処理人員(昭和54年9月30日現在)

 1-25表は,昭和54年の統一地方選挙について,違反態様別に検察庁処理状況を示したものである。これによると,54年9月30日現在における起訴及び不起訴人員総数は2万6,232人である。そのうち起訴された人員は1万6,368人で総数の62.4%を占めている。違反態様別に見ると,買収が2万4,443人と総数の93.2%を占めており,そのうち公判請求された人員は3,837人で,公判請求人員総数の97.2%に及んでいる。

I-26表 衆議院議員総選挙関係公職選挙法違反の検察庁受理人員

 1-26表は,最近行われた3回の衆議院議員総選挙について,公職選挙法違反の検察庁受理人員(検察庁間の移送,再起を含む。)を違反態様別に見たものである。受理人員総数は,昭和51年の選挙では前回(47年)より大幅に減少したが,54年には一転して増加し,前回(51年)より7,132人増の2万8,641人となっている。違反態様別に見ると,前述した統一地方選挙の場合と同様に買収事犯が大半を占めているが,54年における買収事犯は前回より実数,比率とも大幅に増加し,実数で7,628人,比率で4.9%増加している。54年においては,文書違反,戸別訪問は実数,比率とも前回より減少し,選挙妨害,不正投票事犯はほぼ横ばいである。特異な事例として,起訴された当選議員にかかる総額1億円を超える買収事犯が挙げられよう。

I-27表 昭和54年10月施行の衆議院議員総選挙の際の選挙違反態様別処理人員

 I-27表は,昭和54年の衆議院議員総選挙における違反態様別の検察庁処理状況を示したものである。これによると,55年3月31日現在における起訴及び不起訴人員総数は1万8,927人である。そのうち起訴された人員は1万1,965人で総数の63.2%を占めている。違反態様別に見ると,買収が1万7,516人と総数の92.5%を占めており,そのうち公判請求された人員は2,615人で,公判請求人員総数の95.2%を占めている。
 I-28表は,昭和49年以降の5年間について,第一審において公職選挙法違反により有罪となった者の科刑状況を刑種別に見たものである。これによると,53年では,第一審において懲役及び禁錮に処せられた者は426人で,そのうち99.3%に当たる423人に執行猶予が言い渡されている。49年以降の5年間について見ても,懲役及び禁錮の実刑に処せられた者は72人で,全体の1.5%にすぎない。

I-28表 公職選挙法違反の第一審有罪人員

I-29表 通常第一審全事件と公職選挙法違反事件の審理期間別終局人員

 I‐29表は,昭和53年の通常第一審における公職選挙法違反の審理期間を全事件と対比して見たものである。全事件では,3月以内に終局したものが63.7%,6月以内では87.4%になっているのに対し,公職選挙法違反では,3月以内が10.7%,6月以内で26.5%にすぎず,3年を超えるものが16.8%も占めており,この種事件の審理に長期間を要する傾向が現れている。