前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第3章/第4節/2 

2 ひん回累犯者

 ひん回累犯者(multiple recidivist)については,保安拘禁,刑事後見又は累犯加重の要件として各国で様々に規定されているが,ここでは,仮に前科5犯以上を有する者をひん回累犯者として,前科者のうちに占めるその比率を見ることとする。
 1974年における西ドイツの有罪人員中の前科者18万9,582人のうち,前科5犯以上を有する者は,I-48表のとおり,4万477人で21.4%を占めているが,罪名別では,強盗・恐喝(36.1%),窃盗・横領(29.6%),詐欺等の財産犯(29.4%)などが比較的高い比率となっている。また,1974年における西ドイツの受刑者及び保安拘禁者中の前科者のうち,前科5犯以上を有する者は,I-49表のとおり,少年刑では1.1%を占めるにすぎないが,自由刑では40.7%,保安拘禁では81.6%を占めている。1974年におけるイギリスの新受刑者中の前科者の前科数を見ると,I-60表のとおり,前科者(不明のものを除く。)2万454人のうち,前科6犯以上を有する者は1万4,777人で,72.2%を占めている。日本では,1974年における成人刑法犯検挙人員の前科者のうち,前科5犯以上を有する者の占める比率は,I-83表のとおり,総数で24.0%であり,詐欺(32.4%),恐喝(26.5%),窃盗(25.8%)などが相対的に高く,西ドイツの場合とよく似ている。ひん回累犯者が跡を絶たないことは,西欧と我が国に共通する現象のようである。

I-83表 成人刑法犯検挙人員中の罪名別前科回数及び前科者率1974年(昭和49年)