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 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第3章/第4節/1 

1 危険な累犯者

 西ドイツの1974年における検挙人員中の再犯者率を見ると,I-47表のとおり,総数106万2,199人のうち42.8%であり,罪名別では,強盗・強盗的恐喝で67.3%,殺人で52.8%,強姦で51.6%である。アメリカの1970年から1975年における電算化犯歴に基づく調査によって逮捕犯罪者の罪名別再犯者率を見ると,I-66表及びI-8図のとおり,総数25万5,936人のうち64。2%であり,罪名別では,強盗で77.6%,殺人で67.6%,強姦で63.2%である。日本では,1974年(昭和49年)における刑法犯検挙人員に占める再犯者率は,I-80表のとおり,総数(ただし,交通関係業過を除く。)36万3,309人のうち34.3%であり,罪名別では,強盗で56.0%,殺人で48.6%,強姦で49.5%である。強盗,殺人,強姦など凶悪な犯罪において,西ドイツ,アメリカ及び日本で共通して4割以上の高い再犯者率を示している。また,第1章の主要犯罪の国際比較で示したように,西ドイツ及びアメリカにおける強盗,殺人,強姦などの高い発生率をあわせ考えると,両国における危険な累犯者の問題は,絶対数の大きさから見て,かなり深刻な状況にあるのではないかと思われる。

I-80表 刑法犯検挙人員に占める罪名別再犯者率1974年(昭和49年)

 有罪人員中の前科者率においても,同じような共通性が見られる。1974年における西ドイツの刑法適用有罪人員の前科者率は,I-48表のとおり,総数55万5,862人のうち34.1%,強盗・恐喝で69.4%,殺人・傷害等の人身犯罪で48.6%,強姦等の性犯罪で48.0%であり,また,I-54表のとおり,1973年におけるフランスの有罪人員の前科者率は,総数(重罪・軽罪・違警罪の合計)52万8,770人のうち30.5%,強盗で50.0%,殺人で29.8%,強姦で33.1%である。日本では,1974年における刑法犯通常第一審有罪人員の罪名別前科者率を見ると,I-81表のとおり,総数5万5,179人のうち63.7%,強盗で53.1%,殺人で50.3%,強姦を含むわいせつ・姦淫等で50.8%であるが,この有罪人員には略式手続を含んでいないので,略式手続を含む統計として,起訴された刑法犯被疑者の前科者率を見ると,I-82表のとおり,総数43万2,272人のうち36.2%,強盗で51.5%,殺人で45.9%,強姦で40.2%であり,西ドイツ及びフランスと似たような数値になっている。

I-81表 刑法犯通常第一審有罪人員の罪名別前科者率1974年(昭和49年)

I-82表 起訴された刑法犯被疑者の罪名別前科者率1974年(昭和49年)