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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/一/2 

2 仮釈放とパロール

 仮出獄と仮退院とは,ともに,条件つきの釈放であり,また,保護観察を受けさせる措置である。釈放された者には,遵守すべき事項が定められており,それに違反したり再犯をした場合には,社会生活の自由を取り消されて拘禁施設に引き戻されることになっており,また他面では,そういう破目にならないで更生をとげるように,保護観察という更生保護措置がとられている。本人には,誠実に遵守事項を守り保護観察を受けて更生につとめる義務がある。このような構造の仮釈放はアメリカではパロール(Parole)と呼ばれて,進歩した犯罪対策の一つとして推進されている。それは,本人の更生をはかるために,目標を与え努力を誓わせるとともに,援護監督を約束して,本人の更生の場であるべき自由社会の中に進み入らせる措置であり,したがってそれは,再犯予防を考慮した積極的な保護措置である。
 これとちがって仮出場は,ただ釈放するというだけのことにとどまり,条件もつけられないし,保護観察またはそれに代わる更生保護の措置も結びつけられていない。むろん実際の取扱いでは,仮出場についてもできるだけ更生を助けるような考慮が払われているが,制度としては,仮出場には,再犯予防の方策あるいは更生保護の措置としての性格がほとんどみられない。許される人員も前掲V-1表のようにきわめて少ない。
 わが国の仮釈放制度には歴史的に変化がある。犯罪者予防更生法(昭和二四年法一四二号)以前の仮出獄は,釈放された後は,警察官署の監督があるだけで,更生に必要な保護が積極的に与えられる仕組みではなかった(少年受刑者については,大正一二年から,少年法で,仮出獄中は少年保護司の観察という保護監督の下に置かれていた)。このように,積極的な保護措置を伴わなかったから仮出獄を許すという措置は,受刑者を社会に帰すというだけにとどまり,それ自体で更生を助ける措置とはなっていなかった。現行の仮出獄はそれとちがって,制度として積極的な更生保護の措置であって,その目的は再犯を予防し社会を防衛することである。