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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/一/3 

3 仮釈放運用の方針

 刑務所や少年院から収容者を社会に帰す方法としてはパロール方式の仮釈放が最も適切な方法であるから,パロール方式の仮釈放は,できるだけ幅ひろく活用する方針がとられている。それはもちろん,パロールによって犯罪者を更生させて,再犯現象を減らすためである。もしも仮釈放をすることが本人を更生させないことになるならば,あるいは,少なくとも更生を促進することにならないならば,その仮釈放には犯罪対策としての価値はない。だから,収容者に仮釈放適格性があるかどうかは,この立場からきびしい態度で判断されることになっている。できるだけ幅ひろく仮釈放にするということは,適格性の判断をあまくして適格性の幅をひろげることではなく,適格性をそなえさせる努力をして仮釈放の幅をひろげることである。
 実際の仮釈放の結果をみると,判断のあまさのせいか,それとも他の事情によるのか,仮釈放期間中に再犯に陥った者も多数ある。その失敗率を仮出獄者についてみると,V-2表のようになっている。宥恕や報償や恩恵の意味で仮釈放を許すことは,パロール制度の本旨に反することであるが,この制度の先進国であるアメリカにおいても,パロールの仕事に従事している専門家を除くと,パロール釈放と恩赦的報償的仮釈放とを混同した観念から,抜けきれないでいる人々が多く,それがパロール制度の効果的運用を妨げているといわれている。わが国でもこれと似たような事情があるようで,それが純正なパロールの発達を妨げている面があるようである。

V-2表 仮出獄許可人員と取消人員および率(昭和32〜34年)