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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/1 

1 鑑別状況

 昭和49年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-62表に示すとおり,総数4万5,615人である。このうち,家庭裁判所関係は,少年を鑑別所に収容して鑑別を行う収容鑑別1万1,424人(25.0%),収容しないで行う在宅鑑別6,819人(14.9%),その他の鑑別5人の合計1万8,248人(40.0%)である。法務省関係機関からの依頼による鑑別は合計4,040人(8.9%),一般の家庭や学校その他からの依頼による一般鑑別は2万3,327人(51.1%)である。

III-62表 少年鑑別所の受付状況(昭和47年〜49年)

 これらの鑑別人員の合計は,前年に引き続き減少している。最も減少傾向の著しいのは在宅鑑別であるが,これは,III-63表に見るとおり,主として,在宅鑑別の中で多数を占める交通事犯関係の鑑別が減少していることに起因している。

III-63表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和47年〜49年)

 在宅鑑別は,家庭裁判所が在宅のまま調査を行っている少年について,少年鑑別所に鑑別の請求をした場合に行われるものである。この際,少年が自宅から少年鑑別所に出頭してテストや面接を受ける場合や少年の出頭する鑑別所以外の場所,例えば家庭裁判所等に鑑別技官が出向いてテストや面接を行う場合がある。いずれにせよ,この鑑別は,,収容に伴う家庭からの隔離あるいは職業や学業の中断などの事態を避けながら,非行に関連する資質的な問題点を分析し,処遇指針を樹立しようとするもので,対象者に応じたその活用が望まれる。
 なお,鑑別人員の全般的減少傾向にもかかわらず,矯正及び保護関係機関からの鑑別依頼が増加の傾向にある。このことは,少年鑑別所が少年院や保護観察所と緊密に連携し,非行少年の処遇に積極的に参加する態勢を進めていることをうかがわせるものといえよう。
 昭和49年中に家庭裁判所関係の鑑別を終了した者の知能指数段階別人員と29年,39年及び最近2年間のその構成比の推移を示したのが,III-64表である。IQ79以下の低下とIQ90以上の上昇の傾向は依然として続いており,20年前の29年と比べると,その差異は顕著である。

III-64表 知能指数段階別人員の構成比(昭和29年,39年,47年〜49年)

 また,同じく鑑別終了者の精神診断結果別人員と最近3年間のその構成比は,III-65表に示すとおりで,前年と比べて大きな変化はない。

III-65表 精神診断別人員の構成比(昭和47年〜49年)

 次に,非行の種類と年齢層及び知能指数との関係をIII-66表及びIII-67表に示した。まず,年齢層から見ると,窃盗は15歳以下の男子年少少年において高率であり,暴行・傷害・脅迫・恐喝,強姦・わいせつ,道路交通法違反,業務上過失致死傷等は18歳以上の男子年長少年において比較的高率である。虞犯は15歳以下の女子年少少年に,売春防止法違反は18歳以上の女子年長少年に比較的高率である。強盗・殺人は18歳以上の女子年長少年と16歳・17歳の男子中間少年において比較的高率を示している。他の非行のほとんどの種類は,年少少年から年長少年へと年齢層が高くなるにつれて,構成比もより高率となっている。

III-66表 家庭裁判所関係自所収容鑑別終了者の非行の種類と年齢層(昭和49年)

III-67表 家庭裁判所関係自所収容鑑別終了者の非行の種類と知能指数段階(昭和49年)

 次に,知能をIQ79以下,80から99まで及び100以上の3段階に分けて非行との関係を見ると,窃盗や女子の売春はIQが79以下という低い知能段階において比較的高率を示し,強姦・わいせつや業務上過失致死傷はわずかではあるが,IQ80以上の知能の段階にある男子に比較的高率を示している。暴行・傷害・脅迫・恐喝のいわゆる粗暴犯については,知能段階による構成比の差異は余り見られない。
 家庭裁判所関係鑑別終了者のうち,鑑別判定のあった者について,その鑑別判定別人員を示したのが,III-68表である。従来とほぼ同様に,総数の約61%が在宅保護と判定されており,少年院や教護院・養護施設への収容保護が適当と判定されたものは27%である。女子については,初等少年院及び医療少年院への収容意見並びに教護院・養護施設への収容意見が男子に比べて高率であるのが注目される。

III-68表 鑑別判定別人員の構成比(昭和47年〜49年)

 同じ鑑別終了者について,審判決定別人員を示すと,III-69表のとおりである。終局決定未了者が約37%に上るが,決定のあった者のうち,最も多いのは保護観察決定者で,総数の約29%を占め,少年院や教護院・養護施設への収容保護決定者の比率は約17%となっている。

III-69表 審判決定別人員の構成比(昭和47年〜49年)