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 昭和50年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節/1 

第4節 更生緊急保護

1 概説

 第3節において述べた各種別の保護観察対象者のほかに,保護観察に付されない多くの釈放者がある。刑務所からの満期釈放者,保護観察の付かない執行猶予者,起訴猶予者など更生緊急保護法1条各号に掲げられている者がそれである。これらの保護観察に付されない釈放者に対しても,一定の要件の下に,その更生を助けるための援助の措置を執ることができる。この措置が更生緊急保護であって,それらの者が釈放された後,6箇月を超えない範囲内で,本人の意思に反しない限り,かつ,その者の申出があった場合に,再犯の危険を防止する目的のために執られるものである。具体的に行う保護措置としては,保護観察所が自庁で行う帰住のあっ旋・就職の援助・金品の給与・食事の給与等の一時保護,及び更生保護会に委託して行う保護施設収容を伴う宿泊・食事付宿泊とそれに付随する教養,訓練,就職援助,環境調整等を内容とする継続保護とがある。更生緊急保護は,このように,単に宿泊所や食事等を供与するにとどまらず,広く生活の指導その他の補導を含んでいる。しかし,その実施は強制力を伴う指導監督的要素を持つものではなく,しかも,その内容は,実質的には一般の社会福祉措置に近似している。このように,内容的には社会福祉的であり,その目的は犯罪対策としての再犯防止に向けられている更生緊急保護は,その措置を実施するかどうかを保護観察所長の判断にゆだねており,措置の実施は,国の責任において行われるものであり,措置を実施した場合には,その費用は国が支弁することとされている。