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 昭和48年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/2 

2 保護観察の成績

 保護観察の対象者については,毎月その成績評定が行われている。最近5年間に期間満了で保護観察を終わった者の終了時の成績は,II-96表のとおりである。これによると,良好の占める割合は逐年上昇し,不良が減少の傾向にある。昭和47年についてみると,総数では,良好が52%で半数を超え,普通が35%,不良が4%である。保護観察の種別による内訳をみると,少年院仮退院者は,他の種別に比べて良好の割合が目立って少なく,不良が多くなっている。

II-96表 期間満了による保護観察終了者の成績累年比較(昭和43年〜47年)

 ところで,保護観察は,通常,法定期間の満了によって終わるが,保護観察の成績が引き続き良好で,一般の社会人と比べて劣るところがなく,再犯のおそれもないと思われる段階に達したときには,期間満了前であっても,これを終了し,停止し,又は解除することができる。他方,保護観察の成果が挙がらず,遵守事項を守らないとか再犯に陥ったという場合には,これまた所定の手続によって他の措置に切り替え,保護観察を打ち切ることもできる。成績が良好又は不良の者に対してとられるそのような措置は,保護観察の種別によって異なるが,その概況は次のとおりである。

(1) 保護観察の成績良好者に対する措置

 昭和43年から47年までの5年間に,保護観察の成績良好者に対してとられた措置状況は,II-97表のとおりである。これによると,47年中の措置人員は1万2,920人であり,保護観察人員中に占める措置率は17.1%である。このように,近年措置の数及び措置率は,総数において年々上昇しているが,この傾向は,主として保護観察処分少年に対する措置の増大によるものである。以下,保護観察の種別ごとにみると次のとおりである。

II-97表 成績良好者に対して保護観察所のとった措置(昭和43年〜47年)

 保護観察処分少年については,保護観察所長の権限で,試みに保護観察を停止し,又は解除できるようになっているが,昭和47年中に行われた解除の人員は1万2,065人で,実数,解除率とも,前年に比べ引き続き上昇を示している。
 次に,少年院仮退院者については,保護観察所長が地方更生保護委員会に退院の申請を行い,その決定があった場合に保護観察は通常より早く終了することになる。退院申請人員は近年減少傾向にあり,昭和47年の実数は71人,申請率は1.7%と,いずれも前年に引き続き減少している。
 また,仮出獄者のうち不定期刑のものについては,保護観察所長から地方更生保護委員会に対して不定期刑終了の申請を行い,その決定があれば,保護観察は終了することになるが,昭和47年中の申請人員は,わずか16人という少数にとどまった。
 他方,保護観察付執行猶予者については,早期に保護観察を終了させる制度はないが,成績良好で保護観察を実施する必要がないときは,保護観察所長の申請に基づき,地方更生保護委員会において仮解除の決定を行う。昭和47年中の仮解除申請人員は768人,申請率は3.6%で,仮解除決定人員は760人である。これらの数字は,前年に比べ更に減少している。なお,保護統計年報資料によると,47年中に仮解除の状態で保護観察期間満了となった者は676人で,これは,期間満了による終了者の12%に当たっている。

(2) 保護観察の成績不良者に対する措置

 II-98表は,最近5年間に成績不良者に対してとられた措置の概況を示している。措置人員の総数には,ここ数年大きな変動はなく,昭和47年中には1,093人,措置率は前年と同じ1.3%であった。保護観察の種別ごとの措置の状況は,次のとおりである。

II-98表 成績不良者に対して保護観察所のとった措置(昭和43年〜47年)

 まず,保護観察処分少年について,昭和47年中に保護観察所長が家庭裁判所に対して処分を求めて行った通告人員は130人,措置率は0.3%で,前年に比べわずかの増加がみられた。
 少年院仮退院者について,再び少年院に収容する必要が生じたときは,保護観察所長の申出に基づき,地方更生保護委員会から家庭裁判所に対し,戻し収容の申請が行われる。47年中の申出人員は27人で前年とほとんど変わらなかったが,申出率は0.7%とわずかに上昇した。
 また,仮出獄者の場合,本人が遵守事項を守らず,再び刑務所に収容することが相当な状況に至ったときは,保護観察所長から地方更生保護委員会に対して仮出獄取消申請を行い,また,本人が罰金以上の刑に処せられたことを知ったときは,仮出獄取消の申報を行うことになっている。昭和47年中の申請・申報人員は916人,申請・申報率は11.9%で,いずれも前年に比べて減少をみた。なお,前掲II-86表に示したとおり,47年中の仮出獄取消決定人員は787人で,その内訳は,遵守事項違反を理由とするもの544人,新たな有罪の裁判確定を理由とするもの243人である。
 次いで,遵守事項違反を理由とし,保護観察所長が昭和47年中に検察官に対し執行猶予取消の申出を行った保護観察付執行猶予者の数は20人,申出率は1,000人に1人の割合であった。そのほか,保護観察仮解除中の者に行状等の面で問題が生じ,再び保護観察を開始する必要が認められるときは,保護観察所長から地方更生保護委員会に対し,仮解除の取消の申報を行うことになっているが,保護統計年報資料によると,47年中の申報人員は16人で,その全員が仮解除の取消の決定を受けている。
 最後に,婦人補導院仮退院者については,仮退院の取消の制度があるが,仮退院者の数が極めて少ないため,近年,取消に関する措置がとられたことはない。
 なお,地方更生保護委員会及び保護観察所長は,保護観察対象者が一定の住居に居住しないとき,又は遵守事項を守らなかった疑いがあり,呼出しに応じないおそれがあるときは,裁判官の発する引致状によりその者を引致することができ,更に,少年院への戻し収容,仮出獄・仮退院の取消に関する審理又は執行猶予取消の申出に関する審理を必要とする場合は,その者を監獄,少年鑑別所等に留置することができる。II-99表は,それらの概況を示したもので,昭和47年中の引致状請求人員は332人,そのうち,実際に引致した人員は197人であり,また,審理のため留置した人員は96人であった。

II-99表 引致及び留置人員(昭和43年〜47年)