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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/三/4 

4 職員

 少年院新発足の当初には,急激に増加した収容少年の処遇のために十分な数の,経験の豊富な職員を獲得することはきわめて困難で,少年院はつねに手不足に悩まされる実情であった。その補充にしても,施設の転用とともに採用された旧少年保護団体の職員や部外各分野からの未経験者をもって応急の要にあてねばならない状態であった。このような職員の不足と未熟練と,施設の不備などの悪条件がかさなって,少年院の運営は困難をきわめ,職員は奔命に疲れはてる有様であった。これを物語っているのが,破壊,暴行,放火などによる逃走の続発である。この間,逃走を企てた少年の暴行の犠牲となって殉職した職員もあった。
 その後,昭和二六年からは,一八才以上の高年齢の少年が収容されることになり,昭和二八年には,少年刑務所に付設されていた特別少年院が独立するにおよんで,施設の弱点に乗じた放火事故や悪質な集団暴行事件が発生して,一時は少年院の危機とまで憂慮され,これを理由に少年年齢の引き下げを主張する者もあったが,施設の補強,職員の適正配置,処遇技術に関する研修などの措置によって危機を脱し,今日では,不可避の事故を除き,ほぼ安定した状態にある。
 しかしながら,この安定状態も,職員の勤務を強化してようやく保たれているのであって,終夜勤務に服した職員を翌日の午前中かまたは平常どおり勤務させなければ日課の組めないのが,少年院の実情である。