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 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/三/3 

3 収容者の特質

(一) 年齢

 昭和三三年一二月末現在の少年院収容中の男子八,八五〇人と女子一,一三四人とについて,その年齢の分布を法務省矯正局の調査によってみると,男子は一九才がピークで,二〇才がこれにつぎ,両者で収容人員の半数をしめているが,女子は,一八才を中心としてひろく分布している。
 また,少年院再発足以来一〇年間の少年院の新収容者について,年齢構成の推移を同局の調査でみると,昭和二六年を境として,少年院収容者の年齢構成は急激に変化している。そして,昭和三一年には,一九才以上二〇才未満の者が少年院新収容者の半数以上をしめ,その後,この年齢層の者はいくらか減少して,一六才以上一八才未満の新収容者がしだいに増加する傾向をみせている。

(二) 行為

 最近五年間にあらたに少年院に収容された者の行為別の数とその構成比率はIV-47表のとおりである。どの年も,窃盗が半数以上をしめているが,最近の傾向として,窃盗犯と知能犯とが減少する一方,傷害や恐喝などの粗暴犯が急激に増加している。社会における少年犯罪の情勢と軌を一にするものであって,これら粗暴少年の増加が,少年院の運営に困難を加えている。

IV-47表 少年院新収容者の行為別人員と百分率

(三) 知能

 昭和三三年一二月二五日現在少年院に収容中の男女少年の知能指数は,法務省矯正局の前記調査によれば,ピークは男女ともに九〇-九九で,やや低いほうに偏している。そして,昭和三二年に東京近在の三つの男子特別少年院と二つの中等少年院で行なわれた実態調査におけるヴェクスラー・ベルヴュー法による結果は,IV-48表のとおりで,特別少年院ではIQは高いが,言語テストIQが動作テストIQよりも低いことが認められる。この傾向は,中等少年院収容者にもみられる非行少年の一特徴とも考えられる。

IV-48表 特別・中等少年院収容者の平均知能指数(昭和32年)

(四) 精神状況

 最近三年間に,各年一二月二五日現在の全国少年院収容者について,その精神状況を正常と,精神病質傾向のあるものと,精神病質や精神薄弱など精神障害者との三群に大別して,その状況をみると,IV-13図のとおりで,最近,準正常者が急激に増加し,正常者がいちじるしく減少している。そして,昭和三四年一二月二五日の調査総数一〇,二二九人の構成比率は,正常者六・四パーセント,準正常者六七・七パーセント,精神障害者二五・七パーセントとなっている(IV-49表)。

IV-13図 少年院在院者の精神状況別人員の百分率

IV-49表 少年院在院者の精神状況別人員と率(昭和34年12月25日現在)

(五) 処遇の難易

 収容少年の質の考察は以上のとおりであるが,これを「普通に処遇できる」,「処遇やや困難」,「処遇困難」の三群に大別して調査してみたのが,IV-14図である。これによると,最近は,「普通に処遇できる」者の数がしだいに減少し,「やや困難」および「困難」と認められる者が半数以上をしめるにいたっている。

IV-14図 少年院在院者の処遇の難易別人員の百分率