前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和35年版 犯罪白書 第四編/第二章/一/3 

3 家庭裁判所

 家庭裁判所は,終戦後,昭和二四年一月一日から設けられた。それは,従来,地方裁判所の一部分であった家事審判所と,司法省所管の行政官庁であった少年審判所とが統合された刑事裁判所であって,一般の民事,刑事の裁判所と異なった特色をもっている。
 家庭裁判所は,現在,おおむね各都道府県を管轄地域として,合計四九ヵ庁ある。ところで,家庭裁判所の権限には,家事事件の審判および調停と,少年事件の調査および審判などとがあるが,しばらく,後者すなわち少年事件の調査および審判の概況を中心として,家庭裁判所の機構と制度を概観したい。なお,家庭裁判所がとりあつかっている少年関係事件には,少年保護事件のほか,少年雑事件,少年審判等共助事件,少年に対する成人の刑事事件などがあり,昭和三三年におけるこれら事件の受理処理の概況はIV-28表のとおりであるが,ここでは,少年保護事件の受理処理状況について説明する。

IV-28表 少年関係事件別家庭裁判所の新受・既済等人員(昭和33年)

(一) 家庭裁判所の対象となる少年

 まず,家庭裁判所で審判の対象となる少年は,二〇才未満の犯罪少年,触法少年および虞犯少年である。もっとも,対象少年の下限は,原則として一四才で,触法少年と一四才未満の虞犯少年とは,都道府県知事または児童相談所長から送致をうけた場合にかぎって,家庭裁判所の審判の対象となる。また,対象少年の年齢の上限は,原則として二〇才であるが,家庭裁判所で保護観察に付する旨の決定をうけた少年が,保護観察の継続中に少年法第三条第一項第三号に掲げる虞犯事由があると認められれば,保護観察所長の通告によって家庭裁判所の審判の対象となり,その場合には,この二〇才をこえる例外が認められる。また,「準少年保護事件」とよばれる少年審判規則第五五条による保護処分取消事件や収容継続申請および戻収容申請事件も,事柄の性質上,二〇才をこえて,家庭裁判所の審判の対象となる。

(二) 事件受理の経路とその状況

 ところで,全国家庭裁判所における少年保護事件の受理状況を経路別にみると,IV-29表のとおりである。

IV-29表 少年保護事件の家庭裁判所受理経路別人員

 右の統計によると,昭和三三年には,受理の合計は五三一,八六五人で,うち,検察官から送致されたものが約七〇パーセントをしめ,ついで司法警察員から送致されたものが二六パーセント,他の家庭裁判所から移送されたものが二・三パーセントで,その他は,都道府県知事または児童相談所長から送致をうけたものや,一般人または保護観察所長からの通告によるものなどである。その状況を図示すればIV-11図のようになる。

IV-11図 家庭裁判所受理経路

 そこで,これを少年警察,少年検察のところで述べた犯罪少年,虞犯少年,触法少年の別に分けてながめてみよう。犯罪少年は,IV-29表の昭和三三年の統計中,検察官からの送致三七一,二七七人と司法警察員からの送致人員の大部分(すなわち,少年警察のところで述べたとおり,一三五,九二四人から虞犯少年七,三九七人をさし引いた残り一二八,五二七人がほぼこれにあたるものと思われる)である。つまり,犯罪少年の合計は四九九,八〇四人で,全受理人員の九四パーセントをしめている。これらの犯罪少年には,刑法犯と特別法犯との違反人員がすべて含まれているのはいうまでもない。虞犯少年は,そのうちの一部は一般人からの通告,家庭裁判所調査官の報告および保護観察所長からの通告によって家庭裁判所に係属するから,これらの受理経路によるものを合計すると一,七三二人となり,これに警察からの送致にかかる前記虞犯少年の七,三九七人を加えた合計九,一二九人(受理総数の一・七パーセント)が虞犯少年とみられる。触法少年は,前述のように,一四才未満で刑罰法令にふれる行為をし,知事または児童相談所長から送致された少年であるから,IV-29表における知事または児童相談所からの送致の合計四一二人がこれにあたるわけである。
 さて,家庭裁判所における少年保護事件の年度別受理状況はIV-30表のとおりであって,昭和三三年には,五三万人をこえている。この数は,昭和二四年度における受理人員の約五倍,昭和二八年の約二・五倍,昭和三〇年の約一・六倍である。家庭裁判所は,これらの事件について調査を行ない,処分を決定するのであるが,右の調査にあたる機構として,家庭裁判所に家庭裁判所調査官と医務室との制度があり,また,法務省に少年鑑別所がある。これらの制度や機構については,あらためて,つぎの少年調査のくだりでふれることにしたい。

IV-30表 少年保護事件の家庭裁判所新受人員

 最後に,家庭裁判所の管轄とされている成人の刑事事件について,ふれておくことにする。
 少年の福祉を害する成人の刑事事件のうち,ある種のものは,家庭裁判所の管轄におかれている。それは,未成年者喫煙禁止法の罪,未成年者飲酒禁止法の罪,労働基準法の罪の一部,児童福祉法の罪の一部および学校教育法の罪の一部とさだめられている。