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III-9表は,明治三八年以降,懲役または禁錮の裁判が確定して,新たに行刑施設に入所した人員を,各年ごとに,年齢層別に示したものである。明治三八年の新受刑者数は,六万三千余人,同三九年は,六六,一二九人と,戦前最高の数字となっているが,その後は,起伏はありながらも漸減の傾向を示し,大正九年には,ついに三万人を割り,以後,昭和六年までの一二年間にわたって,二万人台を推移し,最も低い大正一二年には,二〇,〇七三人となっている。昭和七年から同一三年までは,三万人を越えたが,昭和一四年には,再び二万人台となり,昭和一七年に至っている。
新受刑者は,昭和一八年ころから増勢に転じ,戦後,昭和二一年になると,一挙に六万五千人な越え,同二三年には,六九,八九九人と,明治三八年以降最高の数字を示しているが,昭和二四年以降は,漸減の傾向にあって,昭和四二年の三万余人に至っている。罪を犯して検挙される者の人員が,戦後激増しているにもかかわらず,戦後の新受刑者数が,混乱の一時期を除いては,戦前とほとんど変わっていないのは,執行猶予率の上昇,現行少年法の施行などによるものと思われる。 新受刑者のうち,二〇歳未満の者の数は,明治三八,九年の九千人弱に始まって,戦前には,二千人前後まで減少したが,昭和一七年から増加をみせ,昭和二一年,二二年,二三年には,一万人を越えたが,現行少年法の施行された昭和二四年と翌二五年には,約六千人,少年法の適用年齢を,一八歳未満から二〇歳未満とする改正部分が施行された昭和二六年には,約三千人に,それぞれ減少し,昭和二八年以降は,昭和三五年の一,〇二四人を例外として,例年,千人未満の数字を示している。III-4図は,少年に対する刑事法制の変遷に,直接影響されることのない,二〇歳以上の新受刑者について,現行刑法施行後の明治四二年以降,おおむね一〇年ごとに,各年齢層の占める割合を図示したものである。総数の四割前後を二〇歳以上三〇歳未満の者が占めるというのが,戦前の標準となっていたもののようであるが,昭和二四年には,その割合が六割を越え,戦前とは,明らかに異なった様相を呈している。これは,戦後,非累犯の新受刑者が,急増したことを反映するものであろう。その後,二〇歳代の占める割合は,漸減して戦前型に近づいているが,四〇歳以上の高年齢層の占める割合は,戦前に比してかなり低い水準にある。 III-4図 新受刑者(20歳以上)の年齢別比率(明治42,大正8,昭和4,14,24,34,42年) 行刑施設に収容されている者の,年末現在の人員数を,明治八年以降示したのが,III-10表である。同年には,各種の収容者を合計して二万人に満たなかったが,逐年増加して,明治一六年ころからは,おおむね,五万人から八万人の間を推移して大正中期に至っている。その後,やや減少して,ほぼ,四,五万人の線に安定して戦前を経過したが,昭和二一年には,約六万八千人に増加し,同二四年には,九六,六〇九人と,明治八年以降最高の数字を示している。その後は,起伏はありながらも漸減して,昭和四二年の約五万八千人に至っている。受刑者の年末収容人員の推移は,おおむね,総数の推移と同じ傾向を示しているが,明治八年以降最高の数字は,昭和二五年の,八〇,五八九人となっている。年末収容人員についても,新受刑者数について触れたところと同じく,戦後の混乱の一時期を除いては,戦前とほとんど変わりのない数字となっている。 |