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 昭和42年版 犯罪白書 第三編/第二章/一/4 

4 少年の刑事裁判

 家庭裁判所が刑事処分を相当と認めて検察官に送致した少年事件については,公訴を提起するに足りる犯罪の嫌疑がない場合,送致を受けた事件について犯罪の情状などに影響を及ぼすべき新たな事情を発見したため,訴追を相当でないと思料する場合,または,送致後の情況により訴追を相当でないと思料する場合以外は,検察官は,公訴を提起しなければならず(少年法第四五条第五号),事案に応じて,公判請求,略式命令請求または即決裁判請求の手続により起訴され,裁判がなされる。このようにして起訴され,第一審裁判所において有罪の認定を受けた少年に対する科刑の概況を,昭和三六年以降についてみると,III-65表のとおりである。この表によると,昭和四一年の有罪人員総数は,一二七,七二七人で,昭和三六年の約一・九倍となっており,その増加は,主として,罰金の激増に基づくものであるが,懲役・禁錮に処せられた者も,四〇年に比べ,実数において四九九人増加している。懲役・禁錮に処せられた者のうち,実刑は,昭和四一年において五五・四%である。少年に対する刑罰のうち,罰金の増加は,すでに述べたように,その大部分が交通関係事犯の家庭裁判所からの逆送数が増加したことによるものである。

III-65表 少年に対する刑罰の概況(第一審有罪人員)(昭和36〜41年)

 つぎに,昭和四〇年中に,第一審の裁判所で裁判のあった少年について,主要罪名別の科刑状況を,年長少年(一八歳以上二〇歳未満)と中間・年少少年(一八歳未満)に区別してみると,III-66表(1)(2)のとおりである。

III-66表 少年事件第一審裁判結果別人員

 まず,懲役・禁錮の実刑と執行猶予および罰金の割合を,刑法犯と特別法犯の合計数についてみると,年長少年では,懲役・禁錮の実刑に処された者は九四三人,執行猶予となった者は八六三人,罰金に処された者は八〇,四八四人で,その比率は,実刑が一・一%,執行猶予が一・一%,罰金が九七・八%となっている。懲役・禁錮の実刑では,窃盗の三五四人が最も多く,ついで,強かん・強制わいせつの一三七人,強盗の九八人,傷害の八六人,恐かつの六八人の順となっている。
 中間・年少少年では,懲役・禁錮の実刑は二六二人,懲役・禁錮の執行猶予は二四六人,罰金は三七,二七九人で,その比率は,実刑が〇・七%,執行猶予が〇・七%,罰金が九八・六%となっている。懲役・禁錮の実刑では,窃盗の六八人が最も多く,強盗の四四人,強かん・強制わいせつの三八人,殺人の三五人がこれについでいる。つぎに,罰金刑をみると,年長少年,中問・年少少年のいずれも,道交違反および過失傷害が,刑法犯と特別法犯の罰金の大部分を占めており,年長少年では九九・五%,中間・年少少年では九九・八%となっている。
 つぎに,少年に対する自由刑の刑期の区分をみるため,懲役刑と禁錮刑とについて,昭和三九年および四〇年の通常第一審裁判の科刑の状況を示すと,III-67表のとおりである。この表によって明らかなように,不定期刑が総人員数の約半数を占めている。また,昭和四〇年の定期刑のうち,懲役刑では八四・二%,禁錮刑では九七・〇%が執行猶予となっている。これは,実刑を言い渡す場合は,ほとんど不定期刑の言渡しとなり,定期刑を言い渡すのは,執行猶予の言い渡しをする場合が大部分である結果である。

III-67表 通常第一審終局被告人中少年(裁判時)の懲役・禁錮科刑区分別人員(昭和39,40年)

 昭和四〇年中に,全国の地方裁判所および簡易裁判所で言い渡された第一審判決についてみると,不定期刑の言い渡しを受けた被告人八七六人のうち,最も多いのは,一年以上二年以下の一〇五人(一二・〇%)で,ついで,三年以上五年以下の五八人(六・六%),一〇月以上一年六月以下の四八人(五・五%),二年以上三年以下の四六人(五・三%),一年以上三年以下の四五人(五・一%),二年以上四年以下の四五人(五・一%)となっている。