ここで性犯罪とは，強かん(同致死傷を含む。)，強制わいせつ(同致死傷を含む。)，公然わいせつおよびわいせつ文書・図画の頒布・販売等をいう。このうち，わいせつ文書の頒布等は，強かんとか強制わいせつなどとは多少性質を異にするものではあるが，統計資料の都合から，いちおう，性犯罪として取り扱うことにした。
　さて，わが国において，性犯罪が昭和三三年以後飛躍的に増加したことは，これまでしばしば指摘して来たところであるが，この傾向は，強かんを除いては，その後も継続し，衰えをみせない。I-19表および20表がそれを示している。すなわち，強かんの発生件数は，昭和三九年をピークとして，昭和四〇年，四一年はわずかずつ減少しており，また，検挙人員も，昭和四一年は，前年より，やや減少している。しかし，強制わいせつ，公然わいせつおよびわいせつ文書頒布等は，発生件数も，検挙人員数も，逐年増加し，昭和四一年には，戦後最高の数字を示している。強かん以外の性犯罪の個々の罪名別の動きについては，警察統計では不分明であるので，検察統計により，昭和三六年以降の罪名別検察庁新規受理人員をみると，I-21表のとおりである。これによると，強かんを除く性犯罪は，いずれも，累年増加の傾向を示していることがわかるが，とくに，公然わいせつの著しい増加が目だっている。

I-19表　性犯罪発生件数(昭和36〜41年)

I-20表　性犯罪検挙人員(昭和36〜41年)

I-21表　性犯罪罪名別検察庁新規受理人員(昭和36〜41年)