本章では、年齢層別の犯罪の特徴について扱ってきたところであるが、本コラムでは、一つの試みとして、出生時期を同じくする世代グループに着目した分析を行う。すなわち、出生年(推計)について10年ごとに区分した世代グループ(以下「世代」という。)、つまり、大正4年~13年生まれ、大正14年~昭和9年生まれ、昭和10年~19年生まれ、昭和20年~29年生まれ、昭和30年~39年生まれ、昭和40年~49年生まれ、昭和50年~59年生まれ及び昭和60年~平成6年生まれの八つの世代間で、昭和29年、39年、49年、59年、平成6年、16年、26年及び令和6年の各調査年における刑法犯の検挙人員の人口比(以下このコラムにおいて「人口比」という。)を比較し、その傾向や特徴について見ていく。
図5は、横軸を年齢層とし、各世代がそれぞれ20~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳又は60~69歳であったときの人口比を比較できるようにしたものである。
分析1として、世代別に、加齢によって人口比がどのように変化するのかを見ていく。大正4年~13年生まれについて見ると、横軸の各目盛りを右に追って行くにつれ、つまり、年齢層が高くなるにつれ、人口比は一貫して低下している。同様に、大正14年~昭和9年生まれ、昭和40年~49年生まれ、昭和50年~59年生まれ及び昭和60年~平成6年生まれについても、年齢層が高くなるにつれ、人口比は一貫して低下している。他方、他の世代については、年齢層が高くなるにつれて人口比が低下するという傾向は同じであるものの、昭和10年~19年生まれでは60~69歳において、昭和20年~29年生まれでは50~59歳において、昭和30年~39年生まれでは40~49歳において、それぞれ人口比が上昇している。これらのことから、いずれの世代も、加齢によって人口比が低下する傾向にある一方、一部の世代では人口比が上昇する年齢層もあることが見て取れる。
分析2として、図5について、各年齢層における世代別の人口比を縦に比較して見ていく。20~29歳、30~39歳及び40~49歳について見ると、大正4年~13年生まれ、大正14年~昭和9年生まれ及び昭和10年~19年生まれの各人口比が他の各世代と比べて高い傾向にあるが、50~59歳及び60~69歳について見るとその傾向はあまり見られなくなる。つまり、50~59歳及び60~69歳について見ると、人口比が高いのは、大正4年~13年生まれ、大正14年~昭和9年生まれ又は昭和10年~19年生まれのいずれかであるとは限らず、また、各世代間の差は比較的小さくなる。
以上から、他の世代と比べて一貫して人口比が高い特定の世代はないことや、年齢層が低いほど世代間の人口比のばらつきが大きいことがうかがわれる。
次に、これまで見てきた世代別の傾向や特徴について、時期に着目してその背景を探る。図6は、横軸を調査年とし、同一年における各世代の人口比を縦に比較できるようにしたものである。
分析2では、複数の世代で、他の世代と比べて人口比が高い年齢層があることを指摘したが、図6を見ると、大正4年~13年生まれが30~39歳であり、大正14年~昭和9年生まれが20~29歳であった昭和29年、大正14年~昭和9年生まれが30~39歳であり、昭和10~19年生まれが20~29歳であった昭和39年は、いずれの世代もその後の年に比べて人口比が高いが、これらの昭和29年及び昭和39年は、高度成長期と称される時期が含まれる。
また、分析1では、いずれの世代も加齢によって人口比が低下する傾向にある一方、複数の世代において、人口比が上昇する年齢層があることを指摘したが、昭和10年~19年生まれが60~69歳であり、昭和20~29年生まれが50~59歳であり、昭和30~39年生まれが40~49歳であった平成16年は、これらの世代の人口比が平成6年及び平成26年に比べて高いところ、平成16年は、失われた20年と称される、バブル崩壊後に続いた日本経済の低迷期が含まれる。
犯罪情勢には数多くの要因が複雑に絡み合って影響を与えていると考えられるところ、図6で見てきたように、特定の年に複数の世代の人口比が上昇していることは、特定の年齢層や世代の傾向ではない社会的な要因が犯罪情勢に影響を与えている可能性を示唆する。また、複数の世代及び年齢層で人口比が上昇していた平成16年において、30~39歳であった昭和40年~49年生まれは人口比が低下していることから、たとえ社会的な動きが人口比に影響を与えている場合であっても、その影響の有り様は、年齢層又は世代によって異なることも示唆される。
以上のとおり、人口比は、20~29歳が他の年齢層に比べて高く、世代を通じて加齢によって低下する傾向があることがうかがわれた一方、社会的な動きの影響を受けることも示唆された。今後も社会情勢の変化等に伴い年齢層や世代ごとに犯罪の発生状況がどのように推移するのかを注視していく必要がある。