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令和6年版 犯罪白書 第7編/第6章/第3節

第3節 女性犯罪者の処遇・支援

現在、刑事施設においては、薬物依存離脱指導等の特別改善指導のほか、女性受刑者の特性に応じた処遇の充実を図るため、女子施設地域連携事業、女子依存症回復支援事業、女性受刑者特有の課題に係る処遇プログラム(窃盗防止指導など)等の様々な取組が実施されているほか、摂食障害を有する受刑者や高齢受刑者への対応もなされている。また、保護観察所を始めとする様々な社会内処遇・支援を行う機関及び団体においても、それぞれの機関や団体の特色を生かした取組が実施されており、保護観察所では、嗜癖的な窃盗事犯者に対する処遇として窃盗事犯者指導ワークブックを活用した指導を実施しているほか、薬物事犯者に対する処遇として、薬物再乱用防止プログラムなども実施されている。更生保護施設においても、女性の施設が設けられているところ、その中には薬物処遇重点実施更生保護施設や指定更生保護施設として指定されている施設もあり、施設ごとに女性の特性に配慮した指導・支援が行われている。

もっとも、法務総合研究所が実施した保護観察所からの聞き取り調査では、女性の保護観察対象者は、男性の保護観察対象者と比べてより複合的な問題を抱えている者が多く、犯罪以外にもケアしなければならない問題が多いほか、トラウマ体験を抱えている者も多いものの、更生保護施設や社会内処遇においてトラウマ体験に適切に対応することは相当に難しいとの所感も得ており(本編第4章第2節1項(3)参照)、被害経験等を有する女性犯罪者に対する処遇・支援の難しさがうかがえた。また、更生緊急保護による宿泊供与の委託終了者における更生保護施設等入所事由では、女性は、男性よりも「頼るべき親族なし」の構成比は低いものの、「親族が引受けを拒否」及び「親族と同居を望まず」の構成比が高く、親族等があっても頼ることのできない状況が多い様子がうかがえた。