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令和6年版 犯罪白書 第7編/第4章/第1節/2

2 女子依存症回復支援事業

刑事施設においては、覚醒剤などの薬物に対する依存がある受刑者に対し、特別改善指導の一つとして薬物依存離脱指導を実施している(第2編第4章第3節3項(2)参照)ところ、同指導に関連し、薬物犯罪の女性受刑者に対する処遇の新たな取組として、札幌刑務支所において、女子依存症回復支援事業が実施されている。同事業は、令和元年度から5か年の事業計画により試行された女子依存症回復支援モデル事業での成果を踏まえ、同モデル事業を移行する形で令和6年4月1日から開始された。

女子依存症回復支援事業では、同刑務支所に設置された女子依存症回復支援センターにおいて、女子依存症回復支援プログラムが実施されている。同プログラムにおける指導は、女性特有の問題に着目し、受刑者に自身の薬物使用の背景への気付きを促し、再使用に至らないための具体的な方策について考えさせることを目的としている。その指導の一つである「コアプログラム」は、薬物使用に至った女性受刑者の傾向として、生活環境、異性等との対人関係、家族関係、心身の疾患、不定愁訴、DV等の被害経験等の問題を抱える者が多く、これらが出所後の薬物依存からの回復を困難にしている要因であると考えられるため、このような問題に着目して構成されている。テキストは「回復支援センター編」と「地域生活編」で構成されており、このうち「回復支援センター編」は受刑中に実施される。受刑者は、出所時に同テキストを持ち帰り、「地域生活編」を出所後に実施することができる。さらに、同センターでの処遇環境は、「出所後の生活に近い環境を」というコンセプトの下に整備されており、居室棟の居住等は全て個室で多くの居室が施錠されておらず、棟内を自由に往来できるほか、共用スペースとして余暇時間に読書や談話ができるホールが設けられている。