法テラス(第2編第1章2項参照)は、被害者等に対する支援業務を行っている。その業務内容は、コールセンター及び各地方事務所を通じて、刑事手続への適切な関与、損害の回復や苦痛の軽減を図るための制度に関する情報提供を行うほか、被害者等の支援を行っている機関・団体の支援内容や相談窓口を案内し、被害者等の支援について経験や理解のある弁護士の紹介等を行うものである。また、法テラスは、被害者参加制度が開始されてからは、被害者参加人が法テラスを経由して裁判所に国選被害者参加弁護士の選定請求をするに当たり、法テラスと契約している弁護士を国選被害者参加弁護士の候補に指名して裁判所に通知するなどの業務も行っている。
法テラスにおける被害者等に対する支援の実施状況の推移(最近10年間)については、6-2-1-5図のとおりである。令和5年度における犯罪被害者支援ダイヤルでの受電件数は2万3,363件(前年度比2,474件増)、地方事務所での犯罪被害・刑事手続等の問合せ件数は1万5,481件(同837件増)であり、犯罪被害者支援の経験や理解のある弁護士を紹介した件数は2,516件(同987件増)であった。また、同年度の被害者参加人からの国選被害者参加弁護士選定請求件数は、726件(請求人員延べ848人)であり、罪名別にその件数を見ると、不同意性交等・不同意わいせつ等446件(61.4%)、傷害104件(14.3%)、殺人(自殺関与・同意殺人を含まない。)62件(8.5%)、過失運転致死傷等(業務上(重)過失致死傷を含む。)52件(7.2%)であった(法テラスの資料による。)。
また、平成28年法律第53号による総合法律支援法(平成16年法律第74号)の改正により、平成30年1月から、法テラスにおいて、ストーカー規制法上の「つきまとい等」、児童虐待防止法上の「児童虐待」及び配偶者暴力防止法上の「配偶者からの暴力」の被害者に対し、必要な法律相談を実施することを内容とする「DV等被害者法律相談援助」が実施されている(児童虐待・配偶者からの暴力・ストーカー等に係る犯罪については、第4編第6章参照)。令和5年度におけるDV等被害者法律相談援助の実施件数は1,570件(前年度比278件増)であった(法テラスの資料による。)。
なお、令和6年4月に総合法律支援法の一部を改正する法律(令和6年法律第19号)が成立し、犯罪被害者やその家族を早期の段階から包括的かつ継続的に援助するための制度(犯罪被害者等支援弁護士制度)が導入されることとなった(8年4月までに施行)。同法の施行により、法テラスの業務に、一定の被害者等であって、必要な費用の支払により生活の維持が困難となるおそれがあるものについて、必要な法律相談を実施すること及び契約弁護士等にこれらに必要な法律事務等を取り扱わせることが追加されることとなる。