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令和6年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節

第2章 検察
第1節 概説

警察等が検挙した事件は、微罪処分(刑事訴訟法246条ただし書に基づき、検察官があらかじめ指定した犯情の特に軽微な20歳以上の者による事件について、司法警察員が、検察官に送致しない手続を執ることをいう。)の対象となったものや交通反則通告制度に基づく反則金の納付があった道路交通法違反を除き、全て検察官に送致される。なお、令和5年に微罪処分により処理された人員は、4万8,299人(刑法犯では、微罪処分により処理された人員は4万8,292人であり、全検挙人員に占める比率は26.4%)であった(警察庁の統計による。)。

検察官は、警察官(一般司法警察員)及び海上保安官、麻薬取締官等の特別司法警察員からの送致事件について捜査を行うほか、必要に応じて自ら事件を認知し、又は告訴・告発を受けて捜査を行い、犯罪の成否、処罰の要否等を考慮して、起訴・不起訴を決める。

平成28年5月に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律(平成28年法律第54号)により、刑事手続を時代に即したより機能的なものとするため、刑事手続における証拠の収集方法の適正化及び多様化等が図られた。これにより、捜査に関連するものとして、<1>取調べの録音・録画制度の導入、<2>証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の導入、<3>犯罪捜査のための通信傍受(以下この節において「通信傍受」という。)の対象犯罪の拡大、<4>通信傍受の手続の合理化・効率化等がなされ、また、公判に関連するものとして、<5>証拠一覧表交付手続及び<6>証人に対する刑事免責制度が導入された(<1>及び<4>は令和元年6月施行、<2>及び<6>は平成30年6月施行、<3>及び<5>は28年12月施行)。

検察庁における取調べの録音・録画は前記改正法施行以前から実施されており、令和4年度の検察庁における身柄事件(警察等で被疑者が逮捕されて身柄付きで検察官に送致された事件及び検察庁で被疑者が逮捕された事件)の被疑者取調べの録音・録画実施件数(前記改正法により録音・録画義務の対象とされた事件以外の身柄事件において実施したものを含む。)は、9万2,379件であり、平成27年度(5万9,411件)の約1.6倍の水準であった(最高検察庁の資料による。)。

また、検察庁では、平成27年10月以降、児童が被害者又は参考人である事件について、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性確保の観点から、警察又は児童相談所からの情報提供を受け、警察や児童相談所の各担当者と検察官とが児童からの聴取方法等について協議を行って対応方針を検討し、これらの機関のうちの代表者が児童から聴取する取組(以下この節において「代表者聴取」という。)を実施している。令和4年度の代表者聴取の実施件数は、検察・警察・児童相談所の三者が連携して実施したものについては、1,614件と、平成28年度(204件)の約7.9倍となっており、検察・警察・児童相談所のうち二者が連携して実施したものを加えた実施件数の総数は、2,722件であった(法務省刑事局の資料による。)。代表者聴取において、児童の供述特性を踏まえた聴取の必要性等を考慮し、司法面接的手法を活用しており、誘導的な質問をできる限り避け、早期かつ短時間の面接等を内容とするプロトコルに沿った児童からの聴取を行っている(詳細については、コラム3参照)。

さらに、検察庁では、犯罪被害者保護施策のより一層の推進を図るため、平成11年度から被害者支援員制度を実施しており、各検察庁に配置されている被害者支援員は、被害相談専用電話であるホットラインによる電話応対を含む犯罪被害者相談、被害者等通知の補助、来庁した被害者等への応対や法廷等への案内・付添い、被害者等の行う刑事確定訴訟記録の閲覧や証拠品の還付請求等各種手続の支援、他の被害者支援機関・団体等の紹介又は連絡・調整等の職務を行っている。なお、被害者参加制度を始めとする刑事手続における被害者の関与については、第6編第2章第1節参照。

このほか、平成24年に犯罪対策閣僚会議において「再犯防止に向けた総合対策」が策定され、再犯防止に向けた取組の必要性が高まったことに加え、障害者・高齢者等が起訴猶予・刑の執行猶予等により矯正施設に入所することなく刑事手続を離れる場合についても福祉的支援を行うことの重要性が広く認識されるようになったことなどから、検察庁では、そうした者の身柄釈放時等に、保護観察所、地域生活定着支援センター、弁護士等の関係機関・団体等と連携し、福祉サービス等に橋渡しするなどの「入口支援」を積極的に実施している。