社会において、就職して自立した生活を送る上では、高等学校卒業程度の学力が求められることが多い実情にあることに鑑み、政府においては、これまで、高等学校の中退防止のための取組や、高等学校中退者等に対する学習相談や学習支援を実施してきた。具体的には、例えば、保護観察所においては、修学支援の取組として、学校等の関係機関との連携に取り組むなどしてきたところ、より直接的に学習の継続につながる支援等を行うべく、令和3年度から4年度まで、「修学支援パッケージ」の試行を一部の庁で行った。このコラムでは、試行庁であった福岡保護観察所の取組を例に、修学支援パッケージでの支援の実情について紹介する(なお、福岡保護観察所の取組に係る記載内容は、4年8月の調査時点のものである。)。
修学支援パッケージは、修学の継続のために支援が必要と認められる保護観察対象者(保護観察の類型別処遇(第3編第2章第5節3項(1)参照)において、就学類型に認定された者(学校に在籍しており、その継続が改善更生に資する者や、不就学の状態にあり、進学・復学を希望し、支援が必要と認められる者)等)に対し、個々の支援対象者のニーズに応じて、学習支援、学校等の関係機関とのケース会議の実施等を組み合わせて実施するものである。
福岡保護観察所では、修学支援パッケージの対象者に学習支援や学校との協議等の支援が実施されている。学習支援については、主として、以下の二つの方法により実施されており、一つは、「ばいこうカフェ」と呼ばれる学習支援である。これは、福岡保護観察所が主催し、更生保護に関わるボランティアの協力を得て行われており、交通の便が良く、休日も使用可能であることから、福岡市内にある更生保護施設で実施されている。参加する支援対象者から、普段の勉強で分からないところを確認しておき、当日は、教員免許を有する保護司により学習支援が行われているほか、高卒認定試験の受験に関しても助言が行われている。学習支援が行われた後は、更生保護女性会の会員との軽食をとりながらの交流も行われている。もう一つは、地域のNPO法人と連携した学習支援である。このような支援の一例として、地域で無料での学習支援を行うNPO法人に、支援対象者の学習支援を依頼し、オンラインにより、ボランティアの大学生から勉強を教えてもらうとともに、大学進学に係る様々な助言を受けることができた事例がある。当該NPO法人による学習支援は無料で行われていることから、経済的な事情により就学の継続が困難な支援対象者にとっても利用しやすいという利点がある。
次に、学校との協議については、家庭環境が落ち着かず、深夜はいかいを繰り返していた中学生の支援対象者について、担当の保護観察官が校長や担任教師と協議するなど、学校と連携して登校継続のための支援が行われるなどしている。
このように、一部の庁で修学支援パッケージの試行が行われていたところ、試行結果を踏まえ、令和5年度からは、全国の保護観察所において、修学支援パッケージが実施されることとなった。BBS会員(第2編第5章第6節4項(2)参照)や教員経験のある保護司等による学習支援を行うとともに、学校等の関係機関とのケース会議を実施するなどして、修学支援パッケージを実施することとされており、今後の更なる充実が望まれる。