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 昭和41年版 犯罪白書 第三編/第二章/四 

四 力動的犯罪原因論

 力動的犯罪原因論ともいうべき立場の学説については,すでに昭和三五年版の犯罪白書において,簡単に紹介されており,また昨年度の白書においてもメッツガーの「力動的構成体」の理論についての叙述がなされている。ここでは,メッツガーの理論のほかに,ヒーリーの「力動精神医学的理論」を付加して,これらを概説することにする。
 これまでにすでに述べてきたように,生物学的諸要因と種々の環境的要因とのふくそう作用によって非行や犯罪が起こることについては,何人も異論のないところであるが,これらの諸要因の作用機制を,単に多面的,並列的に考える静止的な見方と,相互の関係を力動的かつ発達的に理解しようとする見方とがあって,ここでは,後者について論じようとするものであることはいうまでもない。