前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和41年版 犯罪白書 第二編/第三章/二/4 

4 犯罪予防活動

(一) 保護観察所による犯罪予防活動の状況

 犯罪の予防をはかるため,世論を啓発指導し,社会環境の改善に努め,犯罪の予防を目的とする地方住民の活動を助長することは,保護観察所の所掌事務の一つである。したがって,保護観察所においては,その主務ともいうべき保護観察および在監,在院者の環境調査調整の業務に関して,地域住民にはたらきかけ,これに寄与しているほか,保護観察官,保護司は,直接,「社会を明るくする運動」関係の行事を中心として,種々の犯罪予防活動を行なっている。「社会を明るくする運動」は,昭和二六年以来,毎年一回(七月中),法務省主唱のもとに,広く関係機関,団体の協力を得て,中央,地方に実施委員会を置き,全国的に実施されているものである。しかし,運動が社会の表層面にとどまって,犯罪多発地域の改善浄化や問題家庭の指導等の深層面への浸透が十分でないという批判があり,運動の実施方法について,今後検討を要するとの意見が相当に多い。
 昭和四〇年中に,保護観察所が中心となって実施した行事としては,講演会一,〇〇六回(参加延人員一七九,八三一人),座談会三,〇五三回(参加延人員一三五,七〇〇人),ラジオ放送一四〇回,テレビ放送一二六回,新聞掲載一,〇二〇回(二八三紙),その他パレード,弁論大会,映画会,展示会等三,四五五回(参加延人員一二一四,四〇六人)等という状況である。

(二) 保護司会による犯罪予防活動の状況

 保護司会は,保護司を会員とする団体で,保護区および府県単位に組織されているほか,地方,全国の組織があり,保護司相互の連絡協調をはかるとともに,保護観察活動の徹底と地域社会における犯罪予防活動を目的とし,その活動は注目すべきものがある。とくに,保護区単位の保護司会は,地域の篤志家的存在たる保護司を会員とするものだけに,犯罪予防活動の実施体としては好適の組織であり,すでに,その果している役割は,非常に大きいものがある。国においても,その実績を認め,昭和三八年以降,地方交付税交付金のなかに地方公共団体が行なう犯罪予防活動経費として,人口一人につき九四銭四厘(人口一〇万人の都市であれば約一〇万円)の交付内訳を認めている。したがって,全国の各保護区単位の保護司会にあっては,地方公共団体と提携して,この種の活動を展開している。保護区単位の保護司会の犯罪予防活動の一例として,昭和四〇年中における神戸保護観察所管内葺合保護司会の活動をみると,講演会,座談会,ケース研究会等の開催二七回(参加延人員五,六四四人,所要経費七三九,三六三円),街頭活動の実施一四回(参加延人員九,七八〇人,所要経費一七六,七一〇円),ボスター配布等の広報活動の実施二三回(参加延人員二五六人,所要経費九四,八九一円)という状況である。

(三) 更生保護婦人会による犯罪予防活動の状況

 更生保護婦人会は,更生保護事業に協力することを本旨として組織されている篤志婦人による団体で,昭和四〇年九月末現在で八六〇団体,会員五七二,二五七人をかぞえている。その活動は,保護司会と密接な連けいをとり,保護司活動に対する協力,更生保護思想の啓発宣伝のほか,犯罪予防活動等を行なうものである。その活動が全国的にはじまったのは,数年来のことであるが,保護観察所の指導により,年々,活発化しつつあり,昭和三九年九月より四〇年八月までの一年間における全国の同団体の活動状況は,保護観察所,保護司会,地域の詰機関団体,BBS会等の事業に対する協力三,六三三回(参加延人員八三,八九七人),地域社会の浄化,啓発等に関する活動二,四八三回(参加延人員一二〇,一六六人),犯罪前歴者に対する就職,結婚のあっせん等の援護活動二,一六〇件,保護司会,更生保護会,BBS会,犯罪前歴者に対する資金援助活動七,六七二,三七四円等がおもなものである。この団体の会員には,教養,良識を有する婦人が多数参加しているので,その活動体制は,年とともに固まりつつあり,地域における犯罪予防活動の実践組織として,ますます期待が持たれる状況である。